ROOM NO.1301
著者:新井輝

最近、一人で勝手に盛りあがっている「ライトノベルのシリーズ1巻を色々と齧ってみる」キャンペーンとして読んでみた作品。いや、富士見ミステリー文庫は、薄いから…と言う理由じゃないですよ?(笑)

姉と二人で暮らしている少年・健一は呼び出された公園で、不思議な鍵を拾う。そして、その直後、呼び出した少女、千夜子に告白される。答えを保留して別れた健一は、帰りがけに行き倒れている女性・綾を助け…。
うーん…どうしよう、これ…。何とも感想を書きにくい。
話のテーマそのものは、主人公・健一の恋愛探求の物語っていうことになるんだろうか? どちらかと言えば引っ込み事案、へたれな主人公・健一が、告白した少女・千夜子と「仮の」彼氏・彼女になるが、健一はあまり乗り気になれない。一方で、不思議なマンションで出会った綾と肉体関係を持ってしまい、さらに千夜子との関係をなじってきた姉ともまた関係を持ってしまい、自己嫌悪に陥る…。そんな葛藤みたいなところが話の中心に置かれているわけだけど…。
とりあえず、この巻は、プロローグってことなのかな? 作品の冒頭は、それから数年後、として書かれていて、そこで出てきた人物が、この巻のエピローグでちょこっと出てきて終了って感じでもあるし。こっちも評価は保留ってことで。
(05年12月19日)

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ROOM NO.1301#2
著者:新井輝
ひょんなことで知り合うことになったクラスメイトの有馬冴子。彼女もまた、健一と同じマンションのそれも、1304号室の鍵を手にしていた。その部屋では、気さくな少女である冴子だが、他では健一とは決して話そうとはしない。そして、彼女には、ある噂が付きまとっていて…。
うん、全体的に、1巻よりもスムーズに話に入れたように思う。これは、作品の世界観であったりとか、はたまた構成のパターンみたいなものがわかってきた…というところもあるんだと思うのだが。
ストーリーのテーマみたいなところも、(当然といえば当然だけど)1巻と同様。ただ、1巻と比べると遥かに健一と千夜子の仲が進展し、一方で、1巻同様に、そんな仲でも他の女性と関係を持ってしまう健一の葛藤が描かれる…とでも言うか。1巻の感想で「プロローグ?」と書いたわけだけど、2巻で持って、ハッキリとそのテーマが出てきた気がする。そういう意味じゃ、評価を少し上方修正。
…で、これはどうでも良いんだけど、エピローグがあんまりエピローグになっていない気がするのは気のせいかなぁ…。
(06年1月5日)

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ROOM NO.1301#3
著者:新井輝
千夜子に海に誘われた健一。だが、二人の関係は行きつ戻りつ。そんな中、冴子との関係は続き、綾は綾で自分の道を突き進む。そして、ホタルは何故か不機嫌で…。
1巻でかなり酷評しながらも、なぜかシリーズを追いかけている自分って何だろう?(笑) ふと、そんなことを思った今日この頃。
「自分は恋愛に向いていない」という主人公・健一。「付き合っている」はずなのに、どちらも積極的に動くタイプで無いが故に、どことなくぎこちない健一と千夜子の関係がハッキリと今回は描かれていた、という感じだろうか。で、一方でそんな健一を取り巻く状況も変化。冴子に対する健一の心情、そして、姉であるホタルとの関係…。
正直、ネタバレになりそうで、何とも書きにくくて叶わないなぁ…。
ま、どうでも良いけど、あまりにもハーレム状態ってのはどうなのか?
(06年2月7日)

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ROOM NO.1301#4
著者:新井輝
姉・ホタルの気持ちを知った健一。二人は、本能の赴くままに互いを求め合った。だが、その行為が、二人の別離を促すことになり…。
読んでいる最中は「お姉さまはヒステリック」と言う割に、ホタルの出番、少ないやん…とか思ったわけだけど、「お姉さま」ってそこじゃないのね。終盤になってようやく気付いた。
作品、全体をみて考えるのならば、マンションの新住人であるシーナに振りまわされっぱなし、と言ったところかな。肉体的には女性でありながら、「自分は男だ」と言い張るシーナ。そのシーナの「元気いっぱい」のキャラクター性がひたすらに出てきた話のように思う。と、同時に、マンションにおける健一に対する住人たち視線というのもわかるというか…。
ただ、なんていうか…序盤の話で傷心だった割には、結構、健一、楽天的な状態なんだよな…。勿論、回りの人々によって…ってのはあるにしても、回復はやすぎ。ってそーか…だから「恋愛に向かない」のか、健一は(笑)
(06年4月12日)

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ROOM NO.1301#5
著者:新井輝
「シーナ&バケッツ」として路上ライブを続ける健一。そんなある日、ひょうんなことから出会った綾のマネージャー・錦織エリから、思わぬ話を聞かされ…。
…あいかわらず飛ばしてるなぁ……あとがき…(ぉぃ)
内容に関して言えば、前回からの窪塚姉妹の話の後編っていうところかな? 全体的に落ちついた印象の話かな。序盤は、シーナ&バケッツの活動、千夜子との話…なんかが中心で、どちらかと言うと地味な感じ。少しずつながらも進展する千夜子の関係。そこへ現れた錦織によって、最初のときを思い出して…みたいなところが見せ場、というか。ま、この作品、感想書きにくいわ(阿呆)
というかさ…前の巻でも思ったんだが、シーナのテンション高すぎ(笑) 前回同様、この人が思いっきり話を書きまわしているような…。そのシーナに迫るツバメもかなり良いキャラクターしてると思うが(笑)
(06年4月23日)

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ROOM NO.1301#6
著者:新井輝
おかしい…。朝から、佳奈の様子がおかしい。やけに積極的に健一に接してくる佳奈。その様子は、千夜子をむすっとさせるくらいに。そして、どうやら、日奈と関係があるようなのだが…。
……後書き、ついに著者が出てこなくなっちゃった(笑) 千夜子さんの命運やいかに!
……って、後書きについて語ってどーする! って感じなんだけど、正直、感想かきづらっ!! 基本的に話の中心は、ここ数巻と同様に窪塚姉妹、シーナを中心とした展開。実の姉である佳奈への想いを抱く日奈。そして、その日奈のもう一つの人格であるシーナ。「佳奈のためなら、全てを失ってでも…」というシーナの言葉。そして、シーナは帰って来ず…。
と粗筋でお茶を濁してみる(ぉぃ) 今回は、この上無く綾の出番が少なくなって、変わりに、ツバメの本心が出てきてみたりと全体的に伏線感が強いんだよな。だから、何とも書きづらい、っと。
つーか、段々と挿絵の絵柄が幼くなってる気がする。
(06年7月2日)

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ROOM NO.1301#7
著者:新井輝
久しぶりにあったホタル。ホテルに入った健一とホタルだったが、何故かぎこちない。そして、ホタルが見合い、結婚をする…という告白をされ…。
今回は後書きが短いな。残念だ(ぉぃ) 変わりにオマケマンガ付きだけど。
…なんか、段々と本編でない部分の感想の割合が多くなってきている気がする(ぉぃ)
で、まぁ…本編の方は最初にちょっとホタルとの話があるものの、基本的にはここのところずっと続いている窪塚姉妹の話ですな。錦織さんの力添えもあって、日奈が帰って来て、シーナ&バケッツの活動を再開。そんなシーナに佳奈が熱狂して…と。
同一人物であるシーナと日奈。彼女は佳奈が好き。でも、佳奈は、シーナが好きであった、日奈と同一人物だと思っていなくて…。それで上手く行っている…と思った健一なんだけど、冴子は、そんな脆弱さを指摘して終了っと…。
なんか、だんだんと、マンションの持つ秘密とかはどーでも良くなってきているし、シーナ関連の話ばかりでちょっと飽きてきた(ぉぃ) まだ決着がついたわけでもないし、あんまり感想が書けない…。
(06年7月26日)

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ROOM NO.1301 しょーとすとーりーず・わん
著者:新井輝
『ROOM NO.1301』シリーズの短編集。4編…というか、3編収録(1編は、前後編なので)。
一番長い『僕と綾さんと素敵な思い出』は、記憶を失ってしまい、別の人格になってしまった綾を巡る物語。シリーズを重ねるごとに、奇行はあるものの健一との関係がやや薄くなってしまった綾を中心にした物語。綾がマンションに現れた理由なんかを巡って、綾が望んでいた姿なのか? などと話をめぐらせて行く。とは言え、主人公が健一だし、本編に加わっていてもあまり違和感無かったかも。
むしろ、健一の姉・ホタルを主人公にした『私と宇美と豪華なお風呂』、刻也の恋人・鈴璃を主人公にした『私と刻也くんと素敵なタイミング』の方が「番外編らしい番外編」かも。特に『私と刻也くんと〜』は、主要な登場人物でありながらイマイチ、存在感と言う意味で微妙だった刻也とその周囲について描かれていて面白かった。みんなして意地っ張りだしさ…(笑)
作品内の時間軸で言うと、5巻のあとくらいなので、1巻を読んでいきなりとかじゃ、ネタバレしまくりになっているだろうな。ま、これはファンサービス的なところが強い作品ってのもあるんだろうけど。
(06年5月16日)

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さよなら、いもうと
著者:新井輝
3日前、トコが死んだ。トラックに轢かれた、とだけ聞いた。「遺体は見ない方が良い」とだけ言われた。そんな死に方だった。そんな妹が、魔法の日記に書いていた言葉。「お兄ちゃんと結婚したい」。その魔力のせいか、トコは生き返り、再び俺と暮らすことになった…。
いや、良い話でしたな。何てったって、メガネっ娘夢の競演!
なんとなく疎遠になっていた妹の本心を知ったヒロシ。生きかえったトコへ対する想い。戸惑い。またいなくなるのではないか、という不安。そんなヒロシとトコに、常識など無視してでも良いと見守る母。また、妹を亡くしたヒロシを気遣う友人たち。トコの死を心から哀しむユキへの罪悪感。
登場人物を5人と徹底的に絞って、ヒロシを始めとした人々を丁寧に描写することに徹したのは大正解。おかげで、作中全体を通して切ない雰囲気に溢れている。正直、新井輝氏の『ROOM NO.1301』シリーズが、最近、やたらとダレ気味に感じていただけに、どうかな? とか思っていたものの、本作は良い意味で期待を裏切ってくれた。
最後、ミノリとの関係に纏わる伏線をもうちょっと丁寧に描いてくれれば言うこと無しだったのに、というのはあるんだけど、十分に満足の出来る良作だった。
(06年8月6日)

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レンタルお姉さん
著者:荒川龍
NPO法人・ニュースタート事務局の活動、レンタルお姉さん。ひきこもりの人々の元を訪れ、彼らの社会復帰の手助けをする。そんな活動を追ったルポ。
…ということなのだが、読んでいて一番私が感じたのは、「ああ、著者は何も勉強もせずに書いているんだな」ということ。なぜならば、著者は「ニート」「ひきこもり」という言葉がどう違うのか、というような点からして理解しておらず、完全に混同してしまっているからだ(ついでに、スタッフの話などでも混同している部分があるのだが、これは著者による要約だろうか? それとも、そのままだろうか? 後者だとすれば、スタッフも理解できていないことになり問題だろう)。
その時点でかなり脱力したのだが、問題点はそれだけに留まらない。
最初の「ひきこもり」「ニート」の混同の時点でわかるのだが、本書を読んでいてわかるのは著者が「ひきこもりは、本人の性格・資質に問題があるからだ」というスタンスを常に取りつづけていることになる。しかし、そういう点についても、様々な要因があるわけで、本人及び家族が悪いからだ、という書き方は不要な偏見形成にしかならない。
さらに、ここで行われている活動も色々と問題があるように感じる。連日のように押しかける、強引に部屋に入る。挙句の果てには、家を売るなどと脅す形で外に出るように追い込む。著者は、肯定的に描いているわけだが、本当にそうだろうか? (引きこもりによる家族殺害事件などの多くは、このような形で追い込まれ自暴自棄になった結果である)
更に疑問なのは、本書で描かれるのは、ひきこもりだった人々がニュースタート事務局の運営する「若者塾」なる施設に入った…というところまでである。しかし、本当に大切なのは、その後ではないのだろうか? 先に書いたように、追い込んで強引に外に出した場合も多いわけである。それを肯定するのであれば、彼らがその後、どうなったのかも調べる必要があるのではないだろうか?
活動を追っている、と言えば聞こえは良いが、内容は単なるニュースタート事務局は素晴らしい、という礼賛の書…という以上には感じられなかった。
(07年2月13日)

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塩の街
著者:有川浩
生物を塩に変えてしまう「塩害」にみまわれた世界。着々と崩壊へと進む東京で暮らす少女・真奈とその保護者・秋庭。そんな二人の前を人々が行き交う…。
最近、著者の作品をラノベ以外のところでもしばしば見かけるようになったので、デビュー作からちょっと読んでみよう、と手に取った次第なんだが…うーん…。正直に言うと、序盤は凄く良い、と感じた。けれども、中盤から失速してしまった感じがする。簡単に理由を考えると、分量不足。つまり、ページ数が足りない。
全7章で300ページあまり。序盤2つの章は、真奈と秋庭、二人が出会った人間とのやりとりを描いている。この2章は非常に面白い。ここまでで90ページほど。この2つを読んだ時点では、凄く良いな、と感じた。ところが、この後、二人の前にある男が現れて以降が完全に失速。秋庭の過去について、世界を救う、二人の想い…みたいな感じで話が大きくなってしまう。で、話が大きくなった割に、残ったページ数はわずか200ページ程度。ストーリー展開そのものは比較的単純なのだが、その単純な展開を追うのに精一杯という感じで、こういう物語に一番大事だと思われる心理描写だとかがアッサリと流されてしまった。こういう作品ではくどいくらいの心理描写があって良いと思っているだけに、どうしても物足りない。
良いところは色々と見つかるだけに、勿体無い。
(06年3月7日)

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空の中
著者:有川浩
四国沖の上空2万メートルで謎の航空事故が立て続けに発生する。その事故で父を失った少年・瞬は父の葬儀のあと、海岸でクラゲのような不思議な生物を拾う。一方、事故調査委員の高巳は、事故に遭遇した光稀と行った上空2万メートルで未知の存在と遭遇する。
展開の組み方が上手いなぁ…というのが、まず第一。序盤からの事件の連続で瞬、高巳、佳江の主役3組、さらに白鯨という謎の生命と、その立ち位置を示しておいて、中盤からはそれぞれの思惑、やりとりをじっくりと描く。前後半でかなり温度差があるんだけれども、それを上手く利用してきたな、という感じ。
おとなしい少年だけれども、だからこそ過ちを犯すことになる瞬。対策本部の人間として、それぞれと折衝を続ける高巳、光稀。その間にいて、瞬を止めようとする佳江と宮じい、と言った登場人物もなかなか魅力的。個人的には、高巳が好きかな。
気になったところを上げると2点。まずは、ちょっとアッサリしすぎているかな? と感じた部分。デビュー作『塩の街』と比べれば、遥かに書きこまれていると思うんだけど、それでもまだ軽い、と感じる部分はある。もっとも、単行本で470ページ以上ありながら、一気に読める、というのはこの軽さあってこそのものだとも言え、一概に否定は出来ないが。もう1点が、やたらとスケールがでかい割に、最後は妙にこじんまりとしたところに落ちついたな、と思えたところ。(ネタバレ反転)世界の運命を賭けた母娘喧嘩かいな(苦笑)(ここまで)
ま、気になったところはいくつかあるんだけど、全体的に見れば楽しめたかな。
(06年4月22日)

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海の底
著者:有川浩
横須賀の巨大な甲殻類の群れが上陸。混乱する市街で機動隊は甲殻類を押し留めるために奮闘するものの一進一退の状況が続く。状況打破を狙い、警察官僚の烏丸と、現場指揮官の明石は奮闘する。一方、混乱の中で孤立した潜水艦『きりしお』の中には、不良隊員といわれる夏木と冬原、そして子どもたちが取り残される…。
知的生命体と少年の交流と、危機的状況が絡み合った『空の中』とは違って今度の敵は交流を持たない甲殻類の襲来という危機的状況の物語。
「機動隊」では到底推し返せないと判断した明石と烏丸が、煮え切らない官邸を動かすために仕掛ける虚虚実実の駆け引き。潜水艦に取り残された二人の自衛隊員と少年たちのやりとり。少年たちの間には、少年たちなりの序列、派閥ができあがっている。それが自衛隊員の二人とのやりとりで変化が生じて行く。
巨大な甲殻類が襲来してくる、という設定は確かに荒唐無稽。しかしながら、そこで繰り広げられる警察、防衛庁の縄張り争いなんていうものは日本の危機管理であるとかを考えさせられるし、また、潜水艦に取り残された少年たち、そして、夏木、冬原の成長物語、として考えても面白い。
全体を通して考えれば決して派手な場面展開があるわけではないのだけれども、その分、じっくりと心理描写だとかが生きていて存分に楽しめた。設定で躊躇しないで読んでみて頂きたい。
(06年6月13日)

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図書館戦争
著者:有川浩

昭和の末、公序良俗を乱し、人権を侵害する表現を規制する『メディア良化法』が成立した。超法規的な検閲に対抗し、図書館も図書館法、そして、図書隊を編成し対抗する…。
なるほど、これは確かに面白い。
『海の底』などでも同様のことを思ったのだが、有川氏の作品というのは、一見、荒唐無稽な舞台設定でありながら、かなり鋭く現代社会の問題点を突く、という印象を持つ。本作の場合、「メディア規制」「健全育成」などと言ったものである。
実のところ、私自身、現実のメディア規制なんていう流れには注目している部分があり、その上でも興味深く読めた。公序良俗を乱す、ということで、文字通り言葉狩りのように規制をする良化委員会。それに賛同し、規制強化をしようとする諸団体。犯罪に便乗して、それらに責任を押し付けようとする者。法案段階では誰も注目しないうちに成立させてしまう政府…。それに立ち向かう図書館でありながらも、内部では対立構造も抱え…なんていうのは、現実でもかなり近いことがある。ま、現実の場合、書籍よりも、漫画、ゲームなんていう媒体だったりするが、流れがまるっきり似ていて苦笑していた。でも、現実の場合、本作の図書館のように対抗すらしない(できない)んだよなぁ…(苦笑) そういう意味でのアイロニーも効いていると感じる。
…と、小難しいことを続けても構わないんだけど、それ以上に登場人物達のやりとりが楽しい。熱血バカの郁、怒ってばかりの堂上、笑い上戸な小牧、エリート意識丸出しの手塚…などなど、彼らのやりとりだけで存分に楽しめる。雰囲気としては非常に軽く読めるのに、内容そのものは風刺が利いているというバランス感覚が秀逸である。「ナマハゲ」には大笑いした。
文句無く、お勧めできる作品だと思う。

…というか、有川さん…「月9連ドラ」で「レンジャー」って…私、そんな「月9ドラマ」記憶にないのですが?(笑)
(06年10月18日)

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図書館内乱
著者:有川浩
戦闘班に配属されたことを言えないままの郁のもとへ届いたのは、仕事場へ来る、という両親からの連絡。堂上、柴崎、手塚…周囲の面々の協力を仰ぎ、なんとかしようと画策するのだが…。
図書館シリーズの第2弾。『図書館内乱』と言うタイトルだけに、前作のような外部との戦いは少なく、図書館内部での出来事が中心。ただ、内乱…というよりは、内紛かな? という風に感じたけど。派閥争いとかね。
相変わらず面白い。ごく「普通の」図書館員として両親に振舞おうとして右往左往する郁。人当たりは良いけど、実のところ正論で冷たく切り捨てる小牧の話とか、前回、あまりふられていない人物たちが掘り下げられえいたのもが良かった。全体を通してみると、連作短編みたいな印象が強いんだけど、テンポもよくすいすいと読めて面白かった。
個人的には、『一刀両断』の辺りの話が興味深かったかな。勿論、うちは公的な機関でもなんでもないわけだけれども、ウェブ上で書籍の内容について「つまらん」とか、そういう風に書くことの難しさ…というか、孕む問題なんかは、それなりには考えていたつもりだけれども、こうやって読むとより…ね…。
しかし、この段階で早くも郁の憧れの人の正体が判明しちゃったわけで…。いや、『図書館危機』が物凄く楽しみなんですけど…。
(07年4月7日)

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