おと×まほ
著者:白瀬修
ある日、突如、母から「今日から魔法少女ね」と魔法少女にさせられてしまった白姫彼方。いやがる彼方だったが、脅迫の甲斐もあって今日もまた変身して敵の「ノイズ」を叩く…。
うん…悪くはない。…でも、良くもない…って感じかな。
何ていうか、テンポとかそういう点では評価できると思うんだ…。ただし、その一方で、ストーリーがベタベタ。なんか、読んでいて「どっかで読んだ」感が強くて…。あと、バトルシーンそのものの描写は構わないんだけれども、実質的に連続6話の連作短編みたいな感じになっていて、毎回、バトル。これ…半分で良かったんじゃないかと思う。折角、委員長とか、丈とか、そういう濃い面々がいながらにして、チョイ役みたいな状態になってしまっていて…。
しかし…この作品…一体、どういう層を狙っているんだろうか?(笑) ここまで一応、伏せておいたけど、主人公の彼方は「男」ですから。表紙ね(笑) まぁ、表紙レベルなら…って気がしないでもないが(ぇ
色々とまだ投げっぱなしになっている部分もあるし、その辺りは今後に…かな? ただ、もう少し、構成を頑張って欲しい、というのは感じる。
(07年5月28日)

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マッチメイク
著者:不知火京介
試合中にベテランプロレスラー・佐々木が不可解な死を遂げた。死因は蛇毒による毒殺。その後、佐々木の書いた自伝によって自殺として処理されたが…。
厳しいなぁ…。確かに、プロレスの裏話の暴露、というような意味での面白さはある。試合だとか、トレーニングの場面だとかも面白い。ただ…全体的に見ると評価はしにくい。少なくとも、プロレスについて有名レスラーの名前が少し浮かぶ程度の知識しかない私にはキツい。
まず、事件のカギとなるトレーニングマシンがどういうものかわからなかった(苦笑)。それが浮かんでこないので、それが出てくる場面がどういうものかぼんやりとしたイメージしか浮かばない。
また、小説全体を見ると、強引に話を引き伸ばしているという印象も受ける。乱歩賞作品だと、ページ数の関係で最後に無理やりまとめあげてしまったような作品はよく見かけたのだが、全く反対の印象を受けたのは初めてだ。また、トリックの解明にしても、「そんな方法でわかったのなら、警察は何をしていた?」とツッコミを入れたくなる。
正直…どうなんだろうな…これ。
(05年6月9日)

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女形
著者:不知火京介
京都と東京、父子の歌舞伎役者が同じ日に死を遂げた。一人は蜂に刺されて、一人は服毒死。事故と自殺、二人の死はそう結論付けられたのだが…。大部屋役者のすみれは、この事件に疑問を抱き…。
不知火氏のデビュー作である『マッチメイク』と比較すると、なんか共通点が多いな…というのが、まず最初に感じたことだろうか。冒頭、観衆の前で人が死ぬ。主人公は、特殊な世界に身を置く若手、内容もその世界の生活であるとか、そういうものを描写する…などなど。でも、全体的な完成度は遥かにこちらの方が高いと感じた。
やっぱり、作品で注目すべきところは、主人公たちの日常であり、京都の街の風景であり、といったところじゃないだろうか。あまり…というか、全くといって良いほど歌舞伎について知らない私でも様子が浮かんでくる辺りは見事だと思う。また、ちょっとしたところに、歌舞伎用語を使った比喩表現を入れてみたり、なんていう辺りの小ネタも面白い。
ミステリとして考えるのであれば、露骨に伏線が張られている、ということもあって、真相がわかってもそれほどサプライズはなかった。…というか、恐らく、途中でほぼ理由などはわかると思う。そういう意味では弱い、とも言えるけど、前作のような破綻も無く、無難にまとめられている印象。
作品としての完成度、という意味では着実に上がっていると感じた。
(06年1月25日)

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危険な関係
著者:新章文子

父の葬儀で故郷の京都へと帰郷した高行。そこで彼は、血の繋がりが無く険悪な関係にあったはずの父が自分に全財産を渡すと遺言を残していたことを知る。そして、過去、自分が毒殺されかけたことから、母と妹に疑いを向け始める。そして、そこから全てが動き始める…。
第5回江戸川乱歩賞受賞作。
物語としては、登場人物たちのそれぞれの行動・思惑が互いに影響し合い進んでいく、というパズラー作品。主人公が一人、もしくは二人程度で…という作品は多いのだが、こういう作品はこれまで乱歩賞作品を読んできてはじめてだった。初期の乱歩賞に、こんな作品があったとは…。
ともかく、登場人物たちの人間像がしっかりと描かれている。冒頭にも書いたような状況で、父と反りが合わなかったものの母と妹に不信感を抱く高行。そんな高行の態度に反発を覚える妹・めぐみ。j血縁などで置かれた状況としては自分と似た境遇なのに、実際の環境の違いから高行を嫌い、憎むバーのママ・緋絽子。一旗挙げようと、京都へ来て、緋絽子の下で雇われることになった打算的な青年・勇吉。その勇吉のことを想い、京都へ来たものの勇吉に冷たくあしらわれる志津子…、といった主人公たちが実に生き生きと描かれている。そこが最大の魅力だと思う。そして、彼がそれぞれの思惑を抱えて動いた結果、ある事件が起こる。それぞれに動機がありながらも、それぞれ自分ではないと知っている。互いに互いを疑っていく・・・。
まぁ、ミステリーとして考えれば真相は比較的単純なものと言える。けれども、先に書いた、登場人物の生き生きとした様が非常に魅力的で、それが全く気にならない。
1959年の作と、もう50年近くも昔の作品になるわけだが、殆ど古さは感じずに楽しめた。
(07年3月11日)

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血塗られた神話
著者:新堂冬樹
街金融を経営する野田。その野田の新規客・内本が何者かに惨殺され、その肉片が野田の元へと届けられた。警察からの疑いもあり、調査を始める野田だったが、旧知のヤクザ・水戸の経営する街金で、忘れ得ぬ女性の名を目にする…。
なんか、メフィスト賞と言うよりも、江戸川乱歩賞のような印象を持ってしまった。そのくらいストレートな、ハードボイルドモノ。
で、この作品についてだが、闇金融、街金融と言った世界が舞台ではあるものの、それほど深く描かれているわけではない。せいぜい、貸す際の調査であるとか、そういう部分がある程度である。解説などには「その後への布石」などとあるが、言いかえるなら、この作品自体はそれほど深く突っ込んでいないわけである。何と言うか、「街金を舞台とした、ごく普通のハードボイルド」という感じであった。
とはいえ、それでもテンポの良い展開など、十分及第点ではあるが。
(05年4月8日)

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ろくでなし
著者:新堂冬樹
目の前で婚約者をレイプされ、その後、自らの些細な一言で自殺させてしまった黒木。かつては「黒鷲」と呼ばれた凄腕の切り取り屋(債権回収業者)だが、現在は自らの経営する便利屋を部下に任せて自堕落な生活を送っていた。そんな黒木の元に、かつてのお得意さんとも言うべき金融業者・高月が現れ、切り取りを依頼する。最初は、断るつもりだった黒木だが、ターゲットがレイプ犯であることを知り、復讐を決意するのだが…。
私は、デビュー作『血塗られた神話』についで、新堂氏の作品を読んだのは2作目なのだが、舞台であるとかは似ている。ただ、「舞台だけ」という感じがした『血塗られた神話』と比べると、ボリュームの違いもあるのだろうが、深く突っ込んだ印象。
作中で出てくる人々は、それぞれ「ろくでなし」ばかり。黒木自身もそうであるし、ターゲットもそう。さらに、黒木のかつての部下やヤクザなど、続々と「ろくでなし」が出てくる。当然、そういうアンダーグラウンドな世界を舞台にした作品であり、麻薬、暴力、セックス…様々飛び交う。良い意味でも、悪い意味でも、「深く突っ込まれている」と感じる。
オチの部分が、ちょっと強引、ご都合主義的な感じはしたのだが、アンダーグラウンドな魅力を十分に持った作品であると思う。
(05年8月22日)

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背広の下の衝動
著者:新堂冬樹
4篇の作品を収録した短篇集。
一番最後に収録されている『部屋』は、趣を異にしているものの、その他3作はタイトルのように平凡なサラリーマンを主人公とした物語。
とにかく、この3作を読んでいて感じたのは、鬱屈した主人公の感情表現が見事だなぁ…ということ。会社では上司にいびられ、家では家族に疎まれる主人公を描いた『邪』、家族団欒のために自分を常に押し殺す入り婿が主人公『団欒』、セックスレスの妻が、娘の家庭教師と通じているのではないかと疑心暗鬼に陥っていく『嫉』と、とにかく人間の嫌な感情、負の感情の表現には恐れ入りました、という感じしかない。ま、『団欒』に関して言うと『サ○エさん』のパロディなので、そっちで見て楽しむことも可能だけど。
『部屋』に関しては、ちょっと他の3作とは趣が違い、生理的に嫌な気分になる作品。他の作品も決して後味の良い作品ではないのだけど、その締めにこれが来る、という辺りが…。まぁ、この短篇集の最後を飾るには反対に向いているのかも知れないけれど。
(05年9月11日)

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闇の貴族
著者:新堂冬樹
「整理屋」、加賀篤。金と権力を目指す彼は、一介の整理屋から様々な策謀をめぐらせながら闇社会の階段を駆け上がっていく。そんな彼を待ちうけていたのは…。
新堂氏のデビュー作『血塗られた神話』に続いて、本作の金融、それも闇金融の社会を描いた作品。資金繰りに行き詰まった債務者に声をかけ、借金の処理を持ちかける。が、実際には彼らの残った資産を根こそぎ奪い取って行く…。そんな整理屋の実態…という序盤から、次々と話が転がって行く。序盤、『血塗られた神話』のような作品…と思っていただけにこうくるとは予想外だった。いや、驚いた。勿論、新堂作品らしい暴力、変態的な性描写など、ダークな魅力も溢れている(人を選ぶだろうが)。
ただ、序盤の闇金融の描写などと比べ、終盤はあまりにも話が大きくなり過ぎてぽかーんとしてしまった。何か、序盤と終盤の話の規模にアンバランス感を覚えてしまった…というのが正直なところ。いや、単純にエンターテインメント作品として捉えるのならば終盤の話も当然ありなのだが…。
とはいえ、新堂ワールドの魅力が十分に詰まっている作品であることは間違い無いだろう。
(06年1月12日)

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溝鼠
著者:新堂冬樹

復讐代行業・幸福企画の社長・鷹場英一。金に汚く、他人の幸せを破壊することが生きがいの彼は、ある時、請け負った仕事により、大きな事件へと巻き込まれて行く…。
金に汚く、変態的な性癖を持つ英一。英一の姉で、ヤクザの情夫、自らに絶対的な自信を持つ美女・澪。二人の父で、やはり金に汚い源治。3人が狙うのは、大学病院の助教授が溜めこんだ2億円。そして、それはヤクザが狙っている金…。
と、これだけだとただの(ってのも変だけど)クライムノベルだけど、特徴的なのはそれぞれがそれぞれを全く信頼していない点。姉への憧れ、恋心のようなものを抱きつづけ、金を奪い次第、自分を虐待しつづけてきた父を殺すことを考えている。一方の父・源治にしても同じ。さらに、澪は澪で、ヤクザの情夫という立場から自由になるため、自分を慕いつづけている弟を利用する一方で、自分を束縛している弟をやはり色仕掛けで誘った男に始末させる腹積もり。そして、その3人を中心にして、その周囲も「異様な」性癖の持ち主だらけで、それぞれがそれぞれの思惑だけで動いていく。そういう意味では凄くダークな作品。
ただ、全編に渡って、くどいくらいに変態的な性描写だとかが描かれている、というのはどうかな? その描写があるからこそ、作品全体に溢れるダーク感がより強くなっている、とも言えるのだけど、一方で読む側にとっては苦痛に感じる人もいるだろうし、また、テンポという点で少し犠牲になっている部分もあるかな? という風に感じたところがあるのも確か。この辺りをどう評価するか意見が分かれそう。

あと、これはどうでも良いかもしれないが、文庫裏表紙に書かれた説明文の「復讐代行屋」の描写は殆どない。序盤にちょっとあるだけで、あとは2億円争奪戦の模様。裏に書かれた説明文で想像される「復讐代行屋の日々の仕事風景」みたいなことを期待すると、ちょっと肩透かしを食らうような気がする。
(06年5月10日)

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銀行籠城
著者:新堂冬樹
閉店間際のひまわり銀行に一人の男が押し入り、行員、客を人質に立てこもった。要求を言わず、次々と人質を射殺して行く犯人・五十嵐の目的は何なのか? 捜査を指揮する刑事・鷲尾は、組織内の軋轢と戦いつつ、五十嵐と対峙する…。
なんか、新堂冬樹作品としては変わり種だな、というのがまず最初に感じたことだろうか。
私のこれまで読んだ新堂作品は金銭欲、性欲などと言ったものを良い意味でドロドロとねちっこく描いた作品が多い。本作でも、人質になった人々の恐怖からくる保身の姿であるとか、そういう部分は描かれている。が、いつものねちっこさがなく、どちらかと言うと、スリリングさを追求したような印象を受ける。
冷徹な犯人・五十嵐の過去から浮かび上がってくる事実。数々の事件を解決し、「英雄」と言われる鷲尾の過去にも纏わる話。犯人の動機そのものが謎であるので、そこを書くのはやめておくが、東野圭吾氏のある作品のテーマと共通する部分がありながら、全く逆の結果…という辺りの比較を私は読みながら感じた。
気になった点は2点。
まず、ちょっと整合性とかに疑問が残る点。例えば、犯人・五十嵐は拳銃を握ったことも無い素人でありながら、かなりの精度で銃撃を当てているとか、地理的な条件で選んだだけの銀行なのに、終盤にはそこでなければおかしい状況が生まれつつあるなどという点。(ネタバレ反転)鷲尾が目的の一つである、とすれば、鷲尾の担当地域で事件を起こさなければならない。すると、「どこでも良かった」ということにはならない(ここまで)
もう一つが、重要なテーマを提示はしたものの、結局、何ら答えなどを示さずに中途半端な形で終わりにしてしまった点。どうせならば、もっと踏み込んで描いて欲しいと思う。また、物語そのものの終わり方としても、何か釈然としないままに終わった感じである。
スリリングなやりとりを中心にして、途中までは楽しめただけに、結末に不満を感じてしまった。
(06年6月23日)

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炎と氷
著者:新堂冬樹
圧倒的な暴力で取りたて、高い回収率を誇る競馬闇金融を営む世羅。冷徹な取りたてで高い回収率を誇る風俗嬢専門闇金融を営む若瀬。二人は、中学時代以来の盟友であった。しかし、銀行員・赤星を巡って運命の輪が狂いだし…。
いかにも、新堂冬樹作品らしい。そんな作品。
ストーリーは酷く単純。圧倒的な暴力を武器にした「炎」こと世羅と、冷徹な「氷」こと若瀬。二人の盟友が、あるすれ違いから対立し、やがて決戦へ…。それだけである。しかし、そこに描かれるその暴力性、下品さ、そして、主人公二人の強欲さ。それが凄まじい。とにかく、これでもか、とつめ込まれる。新堂冬樹氏のデビュー作『血塗られた神話』から続く闇金融を舞台とした作品であるが、とことん突き詰めたように思われる。闇金融、暴力団との関係…なんて行った辺りもなかなか面白かった。
暴力描写であるとかが多いので人を選ぶ作品なのは間違い無いが、私は楽しめた。
(06年10月7日)

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3億を護れ!
著者:新堂冬樹

うだつのあがらないセールスマン・河内。職場ではお荷物扱いされ、家でも冷たい目で見られる日々。そんな彼が、わずかな昼食代をためて買った宝くじが大当たり。見事、3億長者に。しかし、それをきっかけに毎日のように現れる金をせがむ人々。そして、詐欺師・雨宮の罠が…。
「新堂冬樹の爆笑小説」なんていうコピーがついていたものだから、もっとコミカルな作品かと思ったけれども、内容は相変わらずの新堂節。そして、タイトルがどうも「3億を護れ!」じゃなくて、「3億を奪え!」のように思えて…。
作品としては、きわめてシンプル。3億円を当てた中年男・河内と、それを狙う詐欺師・雨宮の両者の視点でストーリーは展開。河内を嵌めるため、きわめてベタベタなストーリーを用意する雨宮と、その雨宮の仕掛けてきた罠に、雨宮の予想以上に乗ってしまう河内。この構図で、中盤まで進んで行き、そこから、話が急展開。
この雨宮のやり口であるとか、性格であるとかは、ある意味じゃ、これまでの新堂冬樹作品に近いかもしれない。とにかく、金のためならばどんなことでもし、プライドも売り飛ばすし、仲間も関係ない。そして、河内…。
正直、この河内の性格は、笑いと言えば笑い。ただし、大笑い…というよりは、苦笑いとでも言うか…。とにかく、徹底的なまでに、滑稽なまでに愚か。色仕掛けをされれば、すぐに鼻の下を伸ばし、格好をつけ、しかも、妙なプライドを持っている。ある意味じゃ、誰でももっている部分なのかもしれないけど、とにかく見ていて、苦笑がとまらないような行動ばかりをとる。そして、そんな河内に協力者が現れて、3億円がいろいろと動いていく…と。
結末そのものは、ほぼ予想通り。どんでん返し、といっても、ある程度、想定できる部分だしね。むしろ、その過程の奪い合い、3億円争奪戦の過程を楽しむんだろうと思う。
(07年3月25日)

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底なし沼
著者:新堂冬樹

完済したはずの闇金の貸付を暴力によってさらに搾り取る蔵王。武闘派集団と恐れられる暴力団・雨龍会を仕切る若頭・市ノ瀬の秘蔵っ子として力を蓄え、切り取りの帝王と呼ばれる彼だったが、胸には更なる飛躍の野望を抱いていた。そんな彼が、ふとしたきっかけで目をつけたのが結婚相談所を営む日野。かつて、闇金によって全てを失いながら再び上り詰めた日野と、蔵王の戦いが始まり…。
うーん…なんていうか、「やっぱり新堂冬樹だな」とでも言うんだろうか、この感想は。ある意味では、新堂作品の「王道」とも言える展開、オチが待っている。が、その一方で、毎度、同じような展開、業界、キャラクターたちでありながら、しっかりと別のバリエーションを作り出していく辺りが新堂氏の新堂氏たる所以だろうか? なんてことを思う。
ということで、ある意味では、いつも通りの新堂作品とも言える。圧倒的な暴力で、債務者から金を搾り取る闇金業者・蔵王と、結婚相談所を営む日野の争い。どちらも、相手から金を搾り取り、そして、足元を掬ってやろうと争う。しかし、それが次第に、その背後にある暴力団を巻き込んでいって…と。結婚相談所を巡るカラクリであるとか、はたまた、同じ闇金でありながらも様々なバリエーションがあることなどは、面白いと同時にある意味で苦笑が出てくる。実際、振り込め詐欺のやり方だとかも凄いからなぁ…(苦笑) そういう部分なども併せて、著者らしい「安定した」面白さはある。勿論、暴力やら何やらも含めて。
ただ、最終的に一応のどんでん返しが用意されているものの、結局同じパターンの結末であるとか、その辺りで一種のマンネリさみたいなものを感じるのも確か。著者の作品を読んでいる者としては、安定感はあるけど、一方で新鮮味はあまりないような…。どちらを優先して評価するか…なんだろうな…あとは…。
(07年6月2日)

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八月のマルクス
著者:新野剛志

色々なところで、酷評を目にしたのであまり期待しないで読んだのだが・・・そこまで酷いとも思わなかった。まぁ、最初の想定が低かったためかもしれないが・・・。
弱点が無いわけではない。どうもテーマとなるマスメディアの捉え方などは表面的な部分だけ、という印象が拭えないし、犯人の行動に関しても、(主に動機面で)弱いという気がしてならない。そういう部分が気になった場合、特に評価が下がるかもしれない。
ただ、全体的に見ればテンポの良さ、様々な伏線の料理方法などは全く無理無くまとめられているし、そういう点での不満は感じなかった。
大きくお勧め、とは行かないが、それなりには楽しめた。

どうでも良いけど、 著者の経歴が一番のミステリーのような・・・。
(05年1月4日)

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もう君を探さない
著者:新野剛志

女子高教師の高梨は、夏休みに失踪した生徒の行方を追っていた。そんな中、高梨と交流のある暴力団幹部の本間が殺害される…。

色々と見方はあるが、この作品に登場する男達は、何かに囚われた者達である。過去の生徒に囚われた高梨、父に囚われた本間、ヤクザという世界に囚われた者、教師に囚われた者…。囚われているからこそ格好良いのだし、そのように囚われているからこそ、人々は生活できるのだろう…などと思う。

ただ正直、作り込み過ぎである。巧くできてる、とも言えなくはないのだが、私にはむしろ人工的過ぎて鼻についてしまった。一つ一つならば「偶然」で通るのだろうが、全てを通してしまえばあまりにも人工的過ぎるように感じられてならなかった。その辺りが残念。
(05年3月25日)

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