黄金を抱いて翔べ
著者:高村薫

高村薫氏のデビュー作になるわけであるが、デビュー作から高村薫だったというわけか。
「正確なディテイル」とあるが、確かにその通りである。金塊強奪計画が開始されるのが8月。そこから周到な計画が立てられ、また一癖も二癖もありそうな参加メンバーらのやりとりを介して実行に移されるのが12月。計画の立て方から、紆余曲折に至るまで全く持って重厚にストーリーが展開される。
ただ、文庫で350頁あまりの分量で、これだけの人々の過去であるとかを深く掘り下げるのは無理があるのか、何と無く物足りなさを感じてしまったのも事実。緻密さゆえに、その辺りが目立ってしまうような・・・。

高村薫作品は、まだこの作品のほかには、『マークスの山』『李謳』しか読んでいないのだが、男が男に惚れる話しが多い。奈良の女児殺害事件に関して、いろいろなコメントを出していたけど、高村さんも何だかんだで801趣味なのね・・・とか思ってしまったのは秘密(笑)。
(05年1月29日)

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マークスの山
著者:高村薫
南アルプスで16年前に起こった事件により、心に「暗い山」を抱えた殺人者・マークス。次々と起こる殺人事件の被害者たちの繋がりとは一体? 警視庁捜査一課七係の刑事・合田雄一郎は姿無き殺人者を追う。
第109回直木賞受賞作で、第12回日本冒険小説協会大賞受賞作。また、『照柿』『レディ・ジョーカー』と続く合田雄一郎シリーズの1作目。
このブログでは過去に『黄金を抱いて翔べ』の感想を書いているのだが、私が高村薫作品を最初に読んだのはこの作品である。「好き嫌いがハッキリ分かれる」「硬質」などなど色々と高村氏の作品の評判は聞いていたが、その中では比較的読みやすい、とのことだったためである。
で、感想であるが、「重厚だなぁ」というものが第一であり、感想の殆どがそれだった。
こう言って良いのかどうかわからないのだが、「ミステリ作品」として見るのであれば、今一歩という感じである。序盤から、合田たち、警察側だけでなく、犯人・マークスの視点が描かれているし、ビックリするようなどんでん返しがあるわけでもない。そういう面で見るのならば、不満が残るかもしれない。
が、この作品は最初の感想でも書いたように、その重厚さ、を楽しむ作品だと思う。緻密…どころか、杜撰極まりない方法でありながらも次々と人を殺めていくマークス。その杜撰極まりない殺人に対して後手後手を踏まざるを得ない警察内での物語。そして、一見何の繋がりも無い被害者達を結ぶ線。それらが組み合わさって作り上げられた重厚な物語こそがこの作品の魅力なのだと思う。
それぞれの人物やその周囲を巡るドラマ、そしてそれぞれを結んで行くドラマ、そういうものを感じて頂きたい作品。
(05年8月9日)

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李歐
著者:高村薫

大学生だった吉田一彰が出会った美貌の殺し屋・李歐。二人は大陸の夢を見ながらも、別れを迎える。そして、一彰の運命が動き出す。
『わが手に拳銃を』を下敷きにして描かれた作品。
男が男に惚れる。高村薫作品は3作しか読んでいないのだが、そのうち2作でそのような描写があり、そういうテーマが好きなのかな? とか思ってしまうのは…早計過ぎるな。
この作品の最大の特徴は、やはり主人公・一彰を巡る人間模様だと思う。一彰がとにかく会いたいと願う李歐、そんな一彰への償いを心にしまって見守る工場主・守山、一彰を「飼う」という暴力団組長・原口、一彰らとは敵対する関係でありながらも一彰を見守る刑事・田丸…などと言った人物の心情が、著者独特のくどいくらい濃密な描写によって綴られていく。
作品を彩るのが桜の木。先に書いた人物を見てもわかると思うのだが、舞台となるのはいわゆる裏社会である。そして、時代背景も、70年代辺りのような雰囲気であり、これまた色あせたイメージである。そんな、世界観の中で、要所要所で現れる桜の描写が、何とも対照的で美しくイメージされる。
これまでに読んだ高村薫作品(3作品しかないけど)の中では、これをベストに挙げたい。
(05年9月2日)

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照柿
著者:高村薫

ホステス殺害事件を追う合田雄一郎は、電車飛び込み事故に遭遇する。その事故の際に出会った女・美保子に合田は一目惚れする。合田の幼馴染で工場勤務の野田達夫は、かつて関係のあった美保子と出会い、その関係を再燃させる。野田と美保子の関係を知った合田は嫉妬に身を焦がして行く…。
「暑い」。これが、本作の全編に渡って流れる空気だと思う。決して「熱い」ではない。「暑い」なのだ。本作の物語は非常に単純だ。劇的な展開があるわけでも、二転三転の展開が待っているわけでもない。合田と野田、暗い情熱に惹かれていく二人のただただ暑い思いの葛藤、ぶつかりあいがあるのみである。
『マークスの山』から再登場の合田。『マークスの山』では、組織内での対立を制しながらも、ひたすら忍耐強く事件を調べ上げていった彼だが、今作では全く別の顔を見せる。一目惚れした美保子、さらに自らが築けなかった家庭…。様々な感情が入り混じり、道を誤っていく…。
幼少の頃から合田を知る野田。野田は野田で、合田の冷静な仮面の下に隠された本性を暴こうとする。
作中、二人の邂逅は殆どない。本当に僅かな時間だけ。しかし、その僅かな時間のみで強烈に相手を意識し、それぞれの日常へと帰っていく。ある意味では『李歐』とも似ているかも知れない。ただ、相手に惹かれ、再開を求めつづける『李歐』の「熱さ」とは違い、今作は互いへの暗い情熱に裏付けられた「暑さ」があるわけだが。
合田と野田、二人の延々と続く思いにあって、ある意味では美保子の描写は薄い。薄いからこそ、二人と野田の対比となっているのかも知れない。
あるのはひたすらに地味な展開。それをただただ暑く、そしてそれでも先が気になるように仕上げてしまうところに脱帽。
(06年8月27日)

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プラハからの道化たち
著者:高柳芳夫
1968年8月。自由化運動の高まるプラハへソ連を中心としたワルシャワ軍が侵入したその時、一人の日本人が死んだ。自殺として処理されたその日本人・名倉の義弟・川村は、その捜査に納得できず、将来を捨てて、名倉のいた商社に入り、自ら調査を行うため、プラハへ入るのだが…。
第25回江戸川乱歩賞受賞作。
歴代の江戸川乱歩賞を読んでいると、いくつかの流れがあるというのを感じる。近年の主流である、ある業界の裏事情を暴露するもの。歴史ミステリと言って良いであろうもの。そして、謀略小説とも言うべき物。本作は、その謀略小説の最たるものだろう。
1968年のいわゆる「プラハの春」と、その後の武力介入事件を題材に、東西冷戦と、それに纏わるスパイたちの暗躍。陰謀。そういうものの空気を強く持った作品。西側陣営とは言え、決して重要ではないアクターのはずの日本人の死。そこに纏わる謀略の匂い。読み進める中で、抑圧された東側陣営の社会、自由を求める人々の叫び。そんなことを知らないで暮す日本という国の人々。そんなものが、強くメッセージとして描かれる。終盤の主人公・川村の持った疑念は、読者も同様に思うものだろう。
と、同時に本作で面白いのは、その謀略だけでなく、しっかりと密室殺人というミステリ小説の王道とも言えるものが使われている点だと思う。トリックとしては、決して目新しい物ではなく、また、作中でもメインではないが、置いてくる辺りに面白さを感じた。
作品そのものを考えてみると、露骨に伏線が貼られている為、どんでん返しの衝撃がやや弱いというのが気になった。途中、誰もが怪しく思えてくるのは良いのだが、序盤からの露骨な部分がもう少し抑えられていればより良かったのではないか。また、いくら平和ボケの日本人とは言え、川村の行動に危機感がなさ過ぎるのもちょっと気になる。ドイツに留学し、国際情勢にもそれなりに精通している、という風にはちょっと思いにくい。
多少、欠点は思いつくものの、最後に感じるメッセージ性そのものは伝わった。冷戦終結、ソ連崩壊という国際情勢の変化に時代を感じさせられる部分はあるのだが…。
(07年1月8日)

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濡れた心
著者:多岐川恭
感受性に富んだ女子高生・御厨典子。活発な性格の女子高生・南方寿利。二人の少女は、互いに惹かれあい、愛し合っていく。しかし、そんな典子の周囲には、彼女を想うものも多い。そして、典子が目の前に現れた教師・野末と寿利との間で揺れ動いたとき、野末が銃殺体で発見される…。
第4回江戸川乱歩賞受賞作。
いよいよ、これが私の江戸川乱歩賞受賞作完全読破の最後の一作になったのが、こうしてみると初期の乱歩賞作品は、なかなかイロモノ作品が多い、ということに気づく。本作も、非常に凝った趣向で構成されている。
本作は、全編を通して典子を中心とした人々の一人称の手記・日記という形で描かれる。寿利のことを想う典子。典子のことを想う寿利。同じく、典子を想う女子高生・トシに、典子の婚約者を自称する陸一。典子の母・祖母…などといった人々の目線がある。そして、その中で、互いの心理描写、行き違い、そういうったものが記されていく…。
まあ、こう言っては何だが、1958年という時期にこのテーマで作品を描く、ということ自体が何よりも「すげぇ」という印象を与えてくれる。ハッキリ言って、現在だって、このテーマはイロモノ的な扱いになるのではないか?(『Jの神話』(乾くるみ著)とかね) それを50年近く前に発表していた、というのだから。そして、その思いが丁寧に、赤裸々につづられ行く。乱歩賞作品であるため、当然、殺人事件も起こり、トリックだ何だ、というのが出るわけだが、あくまでも、典子を中心とした人々の想いを描いた作品と見るべきものだと思う。
実のところ、多くの人々の手記による、というので多少、混乱する部分がある(これは、意図的なものともいえるが)。もう1点が、トリックに関して無理、というか説明がされていない点、そしてちょっと不可能さを感じる点があった。それがちょっと気になるところ。
ただ、それ以上に、こんな作品が、50年も前に出ていた、というところに素直に驚いた。
(07年4月3日)

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田舎の刑事の趣味とお仕事
著者:滝田務雄
黒川鈴木。既婚で、子供はなし。生真面目な性格な警察官。田舎の警察署の刑事課に勤め、部下の白石らに悩まされる日々。めったに事件は起こらないが、それでもいざ起これば…。
読み終わってまず出る感想は、これかな? 「奥さん、黒すぎます」 なんか、物凄くそのインパクトばかりが目立ってしまうんだけどどーなのか?
と言うわけで、奥さんの黒さなんかも含めて「脱力系ミステリ」と紹介されるだけあって、結構、ユルい雰囲気というか、ギャグのような部分が目立つ作品。ただ、これは私の笑いの感覚の違いかも知れないけど、同じ「脱力」「笑い」でも、「ツボにはまって」笑ったというよりは、「苦笑」とか、そういう部分での笑い、脱力に感じてしまった。
間抜けな部下・白石、やっぱり何か抜けている課長、はたまた黒川…のやりとりがメインになるんだけど、あまりに強調されすぎていて、なんか「あざとさ」を感じてしまうし、また、主人公・黒川にしてもあんまり魅力的と感じられなかった。奥さんの黒さは面白いんだけど、結局、黒川の方も奥さんに対する態度とか酷いものだし…どっちもどっちって言う感じなんだよね。その辺りで「うーん…」と言う感じ。
ミステリとしては、ちゃんと筋は通っている。ただ、いくつかのモノについては、欠点も感じられる。表題作『田舎の刑事の趣味とお仕事』メイントリックなんかは、そもそもする必要性があったのかも疑問だったりするし。そういう部分でも、ちょっと不満点が…。
ただ、こう酷評続きになってしまったものの、後半に行けば行くほど、素直に楽しめるようになっていたのも確か。キャラクターに対する慣れもあるのだろうし、また、著者の側の文章もこなれてきたんじゃないかと思う。そういう意味では続編、次回作が楽しみになった…かな?
(08年1月27日)

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ネガティブハッピー・チェーンソーエッジ
著者:滝本竜彦

普通の高校生・陽介がある日遭遇したのは、チェーンソー男と戦う女子高生。退屈な日々を送っていた陽介は、彼女・絵理と共に戦おうと決意して…。
なんか、この説明だと色々なパターンが考えられると思う。例えば、少女と怪人の戦いをメインに据えたバトルものだって良いわけだし。
が、この作品は紛れも無く青春小説。友人とのたわいもない会話、なんとなくの倦怠感、恋心…そんなところにリアルさがあるし、共感もしやすいのだと思う。チェーンソー男と少女、という非日常があるが、いや、そういう非日常があるからこそ、そんなリアルな心情が強調されるのかも知れない。
正直なところ、それほど劇的な展開があるわけではない。文章につたなさを感じる部分がないわけでもない。ただ、将来性を感じる作品であることは確か。
(05年6月11日)

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NHKにようこそ!
著者:滝本竜彦

ひきこもり歴4年の佐藤達広の前に現れた少女・岬。「あなたは私のプロジェクトに大抜擢されました」そう言って、ひきこもり脱出へと達弘は誘われる…。
とりあえず、漫画版の方をある程度読んでいたので、ある程度、導入部分は分かっていたけど…なんだろう。とりあえず、これ読んで最初に思ったのが、漫画の2巻以降って殆どオリジナルなのね、ってことかなぁ(笑) 何だかんだで、やっぱり『ネガティブハッピー・チェーンソーエッジ』と作風は似ているなぁ…と感じた。全体的な倦怠感というか、そういう雰囲気みたいなものが。オチも含めて。ただ、そちらに比べると、テンションの上下とかがかなり激しい部分はあるけれども。
というか…漫画の方から入ってることもあって、何とも書きづらいなぁ…。ニュートラルな状態じゃないからなぁ…。でも、全体的に言えば、前作よりも面白かったかな?

何かどうでも良い話だらけになったので、内容とは殆ど関係の無い話。
この作品、実はガラガラのバスに乗りながら読んでいたんだけれども、138〜141頁にかけてのエロワードの羅列部分を開いているとき、私のすぐ後ろの席に座っていたおじいさんが、そそくさともう1つ後ろの席へと移動していった。…私、何か変な人にでも見られた?
(05年6月27日)

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わたしたちの田村くん
著者:竹宮ゆゆこ
中学最後の夏。友人の高浦から俺・田村雪貞はある表を見せられた。高浦によると、現在、ちょっとした「告白」ブームが起きているらしい。そして、その表は、付き合っているかどうかを示しているという。そして、俺は見事に「非モテ」の一員。焦った俺の前に現れたのは、成績優秀・容姿端麗ながら変わり者の松澤小巻だった…。
結構、評判が良いってこともあって、手にとって見たんだけど…。
とりあえず、第1巻は、人物紹介ってところだね。主人公の田村が中学最後の夏に、少女・松澤と出会い、少しずつ打ち解けて行く、という『うさぎホームシック』。その松澤が引っ越してしまい手紙のやりとりも減ってきた頃。高校に入学した田村は、かつて兄といざこざを起こしていた少女と同じクラスに入る。そして…という『氷点下エクソダス』の2話プラス、短篇『高浦さんちの家族計画』を収録。
内容としては、比較的オーソドックスなラブコメものと言って良いと思う。やや暴走気味の主人公・田村とちょっと暗い過去をもつ少女2人が出会い、打ち解けて行く。決して気をてらっている訳じゃないんだけど、文章のノリなんかも良いし十分に楽しめた。
ただ、これって「三角関係を巡る物語」になるはずなんだけど1巻は田村と、少女2人のそれぞれとの出会いがバラバラに描かれているだけ。そういう意味で、この巻は導入部分といった印象。本編の最後に、今後を展開を予想させる描写があるだけに、その辺りは2巻をお楽しみに、といったところかな。
(05年10月21日)

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わたしたちの田村くん2
著者:竹宮ゆゆこ

「相馬さんって、誰?」。久しぶりに、松澤から届いた手紙には、それだけが記されていた。松澤は超能力者なのか? 俺・田村雪貞は眠れないまま延々と思考の無限ループに陥った。
ということで、『わたしたちの田村くん』の続きにして、(一応の)完結編。
うーん…、良くも悪くも「お約束の展開」に終始しちゃったかな? という感じ。
1巻では、まるまる一冊を使って、主人公・田村と、松澤・相馬両者の出会いを描き、この2巻でその三角関係に…となったわけだけど、なんか、あんまりにもお約束通りになってしまったな…という感じ。勿論、それはそれでありだろうし、テンポの良さ、ハイテンションっぷりなんかもあって面白いんだけど、なんていうか、あんまりにも特徴が無いまま終わってしまったような….。ちょっと厳しい言い方になるんだけど、何のために1巻丸々を、両者との出会いに費やしたの? というところが、エラく気になった。1巻での設定がそれほど生きているとは思えなかったし、両者ともに、それだけ大事な存在であったなら、2巻の作中の中のあれだけのシーンで終わる形ってのはいびつな感じがするんだよな。ヒロイン2人に接点は殆どないまま、ただ間に入った主人公が、ウジウジ悩むだけ…。まぁ、ページ数だとかは、編集の側の都合もあるんだろうけどさ(笑) そういう意味で、どうも1巻と比較するとパワーダウンっていう印象のまま終わってしまった感じがする。
…っていうか、オマケ(?)の『高浦さんちの家族計画その2』が結構、気に入ったりして(笑)

あと、これは本当にどうでも良いことだけど…1巻にあった田中角栄のモノマネとか、はたまた2巻の「そうです、私が変な田村です」とかのギャグ、今の中高生に理解できるんだろうか?  そんなことをふと思う。
(05年10月26日)

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とらドラ!
著者:竹宮ゆゆこ

目つきが滅茶苦茶悪いが故に不良として恐れられている高須竜児。彼は、小さいが凶暴で獰猛な「手乗りタイガー」こと逢坂大河と出会う。そして、ひょんなことから彼女の秘密を知ってしまい…。
たらこスパ食ったり、たらこスパ食ったり、たらこスパ食ったり…。なんか、自分、竹宮さんと食生活が似ているような気がしてきた。最近、少し、体重が増え気味だし…って、内容と関係ねぇ!!(阿呆)
いやぁ…滅茶苦茶、文章のノリが良い。何をさておいても、それにつきるんじゃないだろうか、この作品は。
著者もあとがきで書いているように、非常にベタなラブコメ作品であることは間違い無い。『わたしたちの田村くん』もベタなラブコメ作品であるけど、こちらはそれに輪をかけてベタ。でも、それが良い。読んでいて、結末は思いっきり予測がつくんだ。けれども、そこまでとにかくハイテンションかつ、テンポの良さで一気に持っていってくれるもんだから読んでいてとても心地良い。
この作品ならではの特徴って言うと、やっぱり主人公かな? この手の作品だと、主人公は見た目も「普通」ってのが一般的だけど、この作品については中身はともかく見た目は「怖い」ってのがあって、それが巧くアクセントになっていると思う。キャラクターも立っているし、良いと思う。
(この巻では)主人公・竜児とヒロイン・大河以外のキャラクターがやや弱い、とは思う。ただ、この巻の話なら、この二人に絞っていると肯定的に捉えられるし問題無いと思う。
評判通り、面白かった。
(06年9月10日)

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とらドラ2!
著者:竹宮ゆゆこ
すっかり馴れ合い、共同生活状態となってしまった竜児と大河。そんな二人の前に現れた転校生・川嶋亜美。完璧なルックスに隠れたその本性は…。
なんつーか…作品を読んでいると、竜児が不良! …どころか、専業主夫に思えて仕方が無い(笑) 家事をこなさざるを得ないっていう主人公は、沢山あれど、ここまで専業主夫くささを感じさせる主人公はなかなかいない…と思ふ。
で、まぁ…作品として見れば、完全な二面性を持った亜美が出てきて…ってことになるんだけど、序盤こそ、その二面性で引っ掻き回す物の後半は、完全に大河&実乃梨の引き立て役になってしまった印象。つーか、前回、実乃梨さん…あんた、只者じゃねぇよ…。流石は、手乗りタイガーの親友ってだけのことはある。竜児…大河は大河で大変だと思うが、実乃梨は実乃梨で、やっぱり大変だと思うぞ…。
話そのものとしては、ここから今度は、大河と竜児の関係発展への足がかりになっていく序章、って感じなんだろうな、うん。
…実のところ、次巻までで一番、気になるのは、インコちゃんの安否だったり(ぉぃ)
(06年10月27日)

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とらドラ3!
著者:竹宮ゆゆこ

亜美との瞬間を大河に目撃されてしまった竜児。「気にしていない」と言いつつも雰囲気は険悪な状況が…。そんな中、季節は6月。プール開きの季節。実は大河は…。
一切れ一切れから、何百匹のタラが生まれていたかもしれない…と考えると深いなぁ…「たらこドリーム」…。…だから、後書きネタを引っ張るな、自分(苦笑)
物語としては、4巻へと続く形では終わっているんだけど、竜児と大河の関係に一応は一区切りがついた、っていうところかな。「気にしてない」と言いつつも、竜児に亜美が色々とするのが面白くない大河。その大河に対して、何だかんだ言いつつも(喧嘩をしても)世話を焼く竜児。そして、最後の大河の台詞…と、(本人達にとって良いのかどうかは別として)事態は進んだわけだしね。
しかし…みのりん…あんた、すげぇよ…(笑) ぶっちゃけ、「どこかヘンな」じゃなくて、「どこもヘンな」状態だよ…。竜児よ…本当に良いのか?(笑) いや、亜美とか、大河もアレだけどさ…。
次回は、別荘編…みたいになるようだけど、このシリーズそのものが、どの辺りに着地点を用意しているのか? が気になってくるところ。もともと、続けようとすればどこまででも続けられる形だけど、あんまりダラダラと…っていうのも嫌だなぁ…と思うだけに。
(06年11月14日)

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とらドラ4!
著者:竹宮ゆゆこ
亜美の別荘への旅行の直前、悪夢(?)を見た竜児と大河。これまで色々やっても全く進展しない現状を打破すべく、一方が犠牲になって今度こそは! と意気込むのだったが…。
……みのりん……貴女って……。
亜美の台詞じゃないけど、確かに、あんまり竜児につりあっているとは……。なんてーか、この作品で一番のクセモノだよな、みのりんて。第1巻の時は、あんまり出番がなかった、ってこともあるんだけど、2巻以降、凄まじいまでにそのクセモノっぷりを発揮してるし。北村も相当なもんだけど。なんか、大河&亜美が普通に思えてくるのが不思議だ。
ま、これまでの流れの中でも、重要な位置になるであろうことは予想されたわけだけれども、予想通りにその通りに、と。それぞれの人間関係、かなり変化してきたわけだし。ただ、あんまりダラダラと続けるんじゃなくて、ある程度ポイントを絞って…って形になってくれたほうが、作品全体を通してのイメージも上がると思うな。…メディアワークスが許すか? ということが気になるが(ぉぃ)
そりゃそうと、竹宮さんのエッセイでも出してくれないかね? 個人的に、すっげー好きなんですけど、この人の後書きって(笑)
(07年1月19日)

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