赤石沢教室の実験
著者:田代裕彦

片桐美術高校に講師として在籍していた芸術家・赤石沢宗隆。彼に選ばれ、弟子となった者たちは、エリート集団として、扱われていた。赤石沢宗隆が死んだ後も同じ。最後の弟子たちは、エリートとして振舞う。亡くなった兄の後を追い、学園に入学したあゆみは、赤石沢教室がそこに関係することを知る。心の中での復讐を開始するあゆみだが…。
いや…これ、どういう風に書けば良いかな? 作品の仕掛けそのものは、決して大掛かりではないのだけれども、それが非常に上手く効いている。そして、それを言ってしまうと作品の良さを台無しにしてしまうからなぁ…。
まぁ、読み出せばすぐにわかるけれども、物語の書き方自体が常に2人称視点と言う珍しい形態。常に、語り部である「僕」は、あゆみに対して語りかける形。あゆみも、その「僕」の語り掛けに応えることが出来る。復讐を心で誓い、計画を練っていく「僕」とあゆみ。勿論、計画を立てるだけで、実行が何だと言うことは無い…はず。しかし、実際に、その計画と同じことがあゆみの知らないところで起こっていく…。
一方でところどころで挟まれる赤石沢のモノローグも強烈。彼の出生、彼の求めるもの。そして、そのための狂気と、彼とは関係のないところで出来上がっていく名声。それが重なって…。
7割、8割方読み終わるまでは、サスペンス、ホラー、そんな印象の強い展開。そして、そこからの急展開…とこの構成は本当、見事。これまでの富士見ミステリー文庫での作品も好きだけれども、今作に関しては、実験的な作品とも言えるのかも知れない。そして、それに成功した、と言うのも間違いないだろう。
面白かった。
(07年12月14日)

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涼宮ハルヒの憤慨
著者:谷川流
シリーズ8作目。『編集長★一直線!』『ワンダリング・シャドウ』の2編を収録。
とりあえず、細かい内容については割愛。
これ、前作『陰謀』辺りから顕著だと思うのだが、シリーズの性格そのものが変わってきたのではないか? というのを感じる。序盤のシリーズは、ハルヒの作り出す混沌をSOS団員が処理する、という感じだったのが、最近は、ハルヒそのものが根源ではなくなりつつあるため。
『編集長★一直線!』は、SOS団を認めない生徒会が、「文芸部を潰す」と言い出し、SOS団で文芸誌を作る、というもの。序盤で早々に目的は明かされるのだが、ま、これまでのシリーズでも何度か出てきた退屈回避パターンである。ま、そんなものよりも、登場人物たちの作る小説がどういうものなのか、何だかんだで張りきるハルヒの奮闘を楽しむ、というタイプの話、とも言えよう。
『ワンダリング・シャドウ』は、SOS団に依頼が…というものだが、主役は明かに長門。カマドウマの時に似ている。そして、ここの根源もハルヒ…とはいい難い。この辺りでどうも、性格が変わったように感じられる…というわけである。もっとも、ハルヒの力がより強大なものとなり、過去に遡って…みたいな方向に進むのかもしれないが。
前作と併せて、シリーズ全体が変化しつつある過程なのかな? と思えてならなかった。
(06年5月7日)

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涼宮ハルヒの分裂
著者:谷川流
入学から1年。学年が変わっても相変わらず、俺の後ろにはハルヒ。クラスの面子も殆ど変わらず。そんな中、古泉が言ったのは閉鎖空間が再び現れたとのこと。そして、それは3月30日、俺が佐々木と再会した日からだと言う…。
うーん…この段階でどういう風に感想を書こうか…という感じはある。シリーズ開始から、作中の時間では1年が経過して2年に上がった作品。そして、これまでバラバラで出てきた様々な要素が集結して…と。ま、ある意味では、お約束とも言える展開。ただし、なかなか凝った構成といい、最後の展開といい、うまくつなげて盛り上げて言ったな、という感じ。しかし、まだきっちりと完結していない状況では感想が書きづらいってばよ。
しかしまぁ…アニメが終わって初めてでたハルヒの作品なわけだけれども、アニメの影響って怖いもんだね。ハルヒ=平野綾、キョン=杉田智和…といった面々の声に自動的に変換されてるんだもん(苦笑) どんだけ影響力あるんだよ、おい。
まぁ、文字通りに「分裂」した状況へとなりつつあるわけなんだけど、どういう風にまとめるのか、どうなっていくのか…。まだ2月近くあるんだよね…それがわかるまで。
(07年4月6日)

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ボクのセカイをまもるヒト
著者:谷川流
平凡な地方都市に住む、これまた平凡な少年・巽。そんな巽の元へ二人の少女が突如現れる。巽を兄のようにしたうが、5メートル以上離れると自爆してしまう人型爆弾の猫子と、「お前の守護者になる」という妖精族の少女・綾羽。そんな二人に振りまわされる巽だったが、そこへ次々と「襲撃者」が現れ…。
うん、これも振りまわされ型、というか、巻き込まれ型のストーリーの典型例とでも言えばよいのかな? 平凡な少年の日常に現れた非日常。それに振りまわされて日常が破壊されて行く…。そんなパターンをしっかりと踏襲した形。登場人物は結構多いし、全体的にドタバタした感はある。あるけれども、そのドタバタした日常と、何度か入る戦闘シーンなどのメリハリがしっかりと効いていて、苦にならない辺りは流石。
この巻では、なぜ巽が狙われたり、守護されたりするのか? という部分については謎のまま。話の感じからすれば、巽と綾羽の関係も進展するような気配もアリ…という感じですな。
正直、パターンそのものにあまり斬新さというものが感じられないような気はするんだけど、その分、大ハズレという人も少ないんじゃないかな?
(05年12月7日)

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ボクのセカイをまもるヒト2
著者:谷川流
綾羽、猫子が加わったものの相変わらずの生活を続ける巽。そんなある日、巽は幼馴染の鮎川姉妹と再開する。が、綾羽は、その姉妹を疑ったことで巽と綾羽の関係はギクシャクして…。
うーん…どうしましょ?
前回がベタベタな出会いから巻き込まれ、という感じならば、今回はその関係がギクシャクして仲直り、とでも言いますが。やっぱり展開としてはベタベタなんだよなぁ…。しかも、作中でも触れられているけれども、主人公、登場する各キャラクターが自分の役割(?)がわかっておらず、それぞれが自分たちのところのエラい人から指令されているだけ。そういう意味で、やっぱり何もわからん! てな状態なんですな、これが。
むしろ、この地の文だとかに見うけられる小説論みたいなものが、この作品のポイントなのかもしれない。ある意味では皮肉とも取れる。本編は、こういうところをのオマケみたいな感じすらする。
あと、終盤の戦闘シーンは無意味にエロいんですが、どーしたもんでしょう? 二次元ドリーム文庫とかじゃないんだからさ(ぉぃ)
(06年6月19日)

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ボクのセカイをまもるヒトex
著者:谷川流
何だかよくわからないうちに世界を巡る争いに巻き込まれ綾羽、猫子という二人のボディーガードをつけての生活になってしまった巽。そんな巽の非日常な日常…。
うーん…最初に思ったんだが、このシリーズ、番外編をやるほど、話が進んでないよな?(笑)
で、この巻、「サービスシーン満載でお届け!」とあるわけだけれども、読んでいて思ったのは挿絵が妙にエロい。2巻で、妙に文章が…ってのはあったけど、今回は文章はおとなしいんだが、挿絵の露出度が激しいこと激しいこと。殆ど、水着とか裸とか、そんなのばっかり。正直、電車の中で読んでいてどーしたもんかと思った。しかも、妄想で思っただけとかのシーンがそういうのだから余計に…。千夏さん、妄想癖激し過ぎます。ごちそうさまでした(ぇ
ストーリーの方はね…。相変わらず、ベタを貫き通したような展開なんだよね。綾羽に対して無意味に対抗意識を燃やす武闘派な石丸くんやら、綾羽と媛の小競り合いやら、千夏さんの妄想やら…とこれでもか、と詰めこまれている感じ。まぁ、サクサクとは読めるんだが、インパクトとしては弱いかな?
(06年12月8日)

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閉じられた世界 絶望系
著者:谷川流
この世にはうんざりすることが多すぎる。たとえば、八月なのにやたら涼しいとか。呼んだ覚えのない者たちが突然部屋にやってきたりとか。その連中が何を言っても出て行こうとしないこととか。あるいは、幼い頃から知っている馴染みの少女が連続殺人犯だったりとか。
…何を書こうかな…(苦笑) 正直、何をどう書けば良いんだかよくわかんない(苦笑)
いや、序盤は突如、部屋に現れた天使、悪魔、幽霊、死神の4人に建御が振りまわされる、という部分でコメディタッチになっているんだ。死神と天使のぶっちゃけたエロトーク、ただひたすらゲームしている悪魔、延々と暗い幽霊って状況じゃ、そりゃ建御もキツいわ…とか言う感想も持てる。
それが、終盤になると一気に方向転換。そもそも、ヒロインである姉妹、語り手である杵筑ととにかく感情移入ができない。そして、そこで語られる姿というのも無意味さ。そして、結末部分で描かれる後味の悪さ。
確かに、これは実験作だな…って感想だけ持った。
(06年9月23日)

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天使が開けた密室
著者:谷原秋桜子
行方不明の父を探すため、バイトに励む美波。しかし、ひょんなことからバイトをクビになったばかりか、借金まで背負ってしまう。そこで、飛びついたのが「寝ているだけで5000円」と言うバイトだったのだが…。
なんか、紹介文だけ見ると、別の作品っぽく思えるね(笑) 別に「援助交際」とか、そういうのじゃないから(笑) というか、そういうやりとりが中にあって笑った。
元々、富士見ミステリー文庫から出版された作品で、ジャンルとしてはミステリー作品。ただ、純粋なミステリーとして考えた場合、非常にシンプルで弱いかな? というところは感じざるを得ない。まぁ、矛盾は無いのだけれども。
むしろ、主人公の美波、その友達である直海、かのこ、隣人である大学生・修矢、さらに母、なんて言った面々とのやりとりこそメイン。実際、全分量のうち、事件が発生するのは、3分の2程度終わった後であり、そこまではそれぞれのやりとりが中心に描かれるわけだし。とりあえず、私の感想としては、だ…お母様、色んな意味でツワモノです(笑)
創元推理文庫で復刊となったわけだけれども、やはりライトノベルとして楽しむ方が良いんじゃないかと思う。同時収録の『たった、二十九分の誘拐』も含めて、後味などは凄く良いが。
(06年12月25日)

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龍の館の秘密
著者:谷原秋桜子

失踪した父を探すため、アルバイトに励む美波。今回、武熊さんから紹介されたのは、「立っているだけで2万円」というもの。そのバイトとは、何と托鉢!! しかも、バイトの打ち上げから何故か京都まで行くことになってしまい…。
正直、托鉢ってそんなに儲かる仕事なんだろうか…? まず、そこが気になって仕方が無いんだが…(笑)
以前読んだ『天使が開けた密室』の続編。今回も事件が起きるまでが長く(舞台となる龍の館についた時点で3分の1)、事件の解決までが短い…というところはあるけれども、ちゃんとしたミステリにはなっている。
やっぱり、このシリーズは、登場人物のやりとり、そして、変なバイトに参加することになって四苦八苦する美波の姿というのが見所になるのかな? そりゃ、托鉢だ! なんて言われりゃあねぇ…(笑)
今回は、お嬢様・かのこが大活躍。前回でも「変人」っぷりは出ていたけど、今回の活躍はお見事。平気な顔をしてウソをついてみたりと…只者じゃないところを存分に発揮。ある意味、探偵役の修矢よりも怖いって…。
ミステリとして見た場合、矛盾だとかはないのだけれども、メイントリックに関する池の構造がちょっと分かり辛かったのが残念かな。途中、いくつかイラストを用いてどういうものか…というのがあるだけに、図解が一つ入っていれば、大分違ったんじゃないか、と思う。そこが残念。
(07年2月19日)

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砂の城の殺人
著者:谷原秋桜子
冬休み、父を探すために旅に出ることを決意した美波。だが、その前にもう少し、旅費をためたいと考える。その矢先、再び武熊さんから紹介されたのはカメラマンの助手。しかし、そのカメラマンは、廃墟専門。しかも、2度目の撮影で訪れた廃墟ではミイラがあって…。
このシリーズ、これまで事件が起こるまでがちょっと長いかな? という不満点を述べていたんだけれども、本作は結構、そこまでのテンポが良かったのがまず良かったな、というところ。で、話そのものも、なかなか凝っていて良いんじゃないか。
廃墟となり、すぐに気をつけないと崩れてしまう建物。そこへ集まった兄弟。そして、12年前に行方不明になった母親と、ミイラ状態の遺体。そして次々と起こる事件…。
山の中で孤立した廃墟。嵐の中。不気味に移動するミイラ。そして、そのミイラの移動に伴って起こる第1の事件。一緒にいくことになった直海の推理で事件そのものは解決…に見えたそのときにおきる事件。最後の最後に名探偵が出てきて…っていうパターンは、お約束ではあるんだけど、それぞれに筋が通った推理が展開され、それが事件で崩れて複雑化していく…って辺りの流れとか、面白かった。
ま、本当の探偵役である修矢がなぜそこまで短時間で完璧に推理できるんだ? というのはあったけど、シリーズの中では一番好き。
(07年5月4日)

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データの罠 世論はこうしてつくられる
著者:田村秀

巷には「データ」が溢れている。「視聴率」「内閣支持率」「経済波及効果」「都道府県ランキング」等々……。メディアでこれらのデータを目にしない日はない。我々は、それらに影響を受けている。しかし、そのデータはどの程度、客観性があるのだろうか?
なんて言うか…実のところ、この手の書は良く手に取る私にとって、それほど目新しいものはない。『社会調査のウソ』(谷岡一郎著)であるとかと、実のところ、内容は大きく違っているわけではない。実際にある、様々な事例を出して、その統計、調査の問題点を明らかにし、「データの客観性」について考察していく、という形である。
例えば、様々な指標がある中の優先の方法で順位が大きく変わってしまう自治体ランキング。そもそも、誤差を含む調査であるのに0,1%単位で数を争う視聴率。マイナス面を殆ど考慮していない経済波及効果の数値。…など、実例を出して説明して行く。はっきり言ってポイントをまとめた終章だけでも十分に見方が変わるのではないかと思う。
この書について、最も良いと思う部分は、計算式などが殆ど無いことだと思う。誤差率であるとかは、当然、計算式を用いなければ算出できない。しかし、そこまで一般人である我々が知る必要があるか? といわれれば疑問である。誤差が付き物、くらいの意識を持つだけで大きく違う。そういう意味では、そのポイントに絞っているのは好感が持てる。
逆に気になった点としては、4章の特に後半だろうか? 官民について、なのだが、著者がそちらの専門家ということもあってか、データの客観性の検証というよりも、かなり著者自身の意見の割合が大きくなる。個人的に共感できる部分は多いのだが、本書の内容にはあまりそぐわないように感じる。
ただ、先も述べたが、終章に書かれたポイントを立ち読みするだけでも意味はあると思う。
(06年9月24日)

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統計でウソをつく法
著者:ダレル・ハフ
うちのブログの書評でも、過去に何度か、メディアリテラシーの書、考え方の書、などと言った書籍を紹介してきた。『議論のウソ』(小笠原喜康著)とか、『世間のウソ』(日垣隆著)とかがそれに当たる。で、この書もその系統…というよりも、このようなジャンルの書の古典的な書というほうが正しいかも知れない。
内容は、コンパクトでありながら極めて明確である。新聞などで出てくるデータの出所はどこか、どのような方法で行われた調査か、「平均」というが、どういう「平均」なのか? …などなど、ちょっと社会調査であるとかについて学んだ経験があるものにとっては至極当たり前の事が書かれているに過ぎないのであるが、知らない人は意外と多いのではないだろうか。
この書は「古典」と書いたわけだが、この書が書かれたのは、1968年(日本での初版っていう意味ね)。そのため、社会情勢の違いだとかは感じざるを得まい。また、国も違うわけだから余計に、だ。けれども、ここで書かれている例と似たような手法の調査結果というのは、現在のマスコミでも大量に流されている。そういう意味では、時代、国は変わっても、行われていることは変わらないものだなぁ…とか思わされた。
まぁ、宣伝とは自分に都合の良いもの(のみ)を表に出したがるものであるし、何かの調査というのは、何らかの意図を持って行われるものである。よって、このような調査が登場することは今後も続くと思う。だからこそ、受けてである我々が、知識を持って処理すべきなのではないかと思う。
(05年11月2日)

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枯草の根
著者:陳舜臣
神戸の街で高利貸しをやっていた中国人・徐銘義が殺害された。徐の将棋仲間であり、徐の漢方医でもあった陶展文は、潔癖症で几帳面だった彼の性格から違和感を覚え、独自の調査を始める。また、陶の拳法の弟子で新聞記者の小島も、大物市会議員の線から事件を追う…。
第7回江戸川乱歩賞受賞作。
まず、極めて個人的な話になるのだが、江戸川乱歩賞の受賞作一覧を眺めていて一番驚いたのは、実はこの作品の存在だった。というのは、著者の陳氏が乱歩賞、ミステリー作品というジャンルを書いていた、というのが意外だったため。西村京太郎氏、和久峻三氏、森村誠一氏、多岐川恭氏…などなど、錚々たる顔ぶれがいるものの、彼らはミステリーというジャンルで活躍している人物。しかし、陳氏というと、歴史小説のイメージがあまりにも強かったためだ。そういう意味でも、非常に興味深くこの作品を読むことが出来た。
さて、作品について、であるが、予想以上にしっかりとした本格ミステリー作品。神戸の街で起こった殺人事件。被害者・徐の周りにあるいくつもの線。大物市会議員を巡る疑惑、シンガポールの大物華僑を巡る疑惑、中国人コミュニティ、勿論、徐の仕事である高利貸しにまつわるトラブル…。序盤から、多くの情報が錯綜し、また、いくつかの線が見え隠れしながらも、しっかりとアリバイ崩し、伏線などが用意されていてオーソドックスながらもしっかりとしたミステリー作品になっていると感じられた。
また、この作品を彩っているのは、登場人物、特に中国人(及び、華僑の人々)を巡る物語だと思う。実のところ、ミステリーとしての部分だけで語るなら、日本人だけで作っても問題は無い。けれども、中国人・華僑といった人々の物語を取り入れることで、作品としての深みが与えられているように感じた。恐らく、日本人だけ、で同じようにしても微妙だったと思う。
トリックについては、比較的シンプルで、分かる人には分かるのではないかと思う(というか、私は分かった)。ただ、それが価値を損ねているとは思わないし、この人物の描き方などが、やがて歴史小説の名手へと向かわせたのだな、というのが感じられた。
(07年3月21日)

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けんぷファー1
著者:築地俊彦
その日、目が覚めると瀬能ナツルは、女の子になっていた。しかも、美少女に。驚き戸惑うナツルに、憧れの少女・楓からもらった趣味の悪いぬいぐるみ・ハラキリトラは語りかける。「お前は、ケンプファーになった。敵と戦え」と。とりあえず元に戻って登校するナツルだったが、口の悪いケンプファーに襲われて…。
とりあえず、微妙な声優ネタが多くて笑った。口の悪い田村ゆかりだの、水樹奈々だの、堀江由衣だの…。まぁ、脚本とかも良く書いている著者だからだろう…という気がしないでもないけどさ…。
裏表紙の内容紹介では「ラブコメ」とは言うものの、1巻の段階ではそれほど「ラブコメ」って感じは無かったかな? むしろ、バトルシーンを中心にして、それぞれの掛け合いとかが中心になっていて。今後、女性Verのナツルと、それに惚れた楓に加えて、紅音辺りが中心になって進んでいくんだろうけどさ…。
うーん…少なくとも1巻だと、「ここが素晴らしい」っていうのが難しいな…。非常に良いテンポで行われるキャラクター同士のやりとり、っていうのが全て、とでも言うか。そこは、本当に素晴らしいんだけど、他に「ここが凄い」とかって言いにくいんだよな…。逆に言えば、全体的なレベルが高い、といえるのかな?
とりあえず、図書委員Verの紅音は、かなりストライクゾーンの真ん中付近に来ていますよ、うん。
(07年6月28日)

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けんぷファー2
著者:築地俊彦
女の子になって戦う「ケンプファー」となってしまったナツル。憧れの楓は、女である自分に恋し、生徒会長であり、敵ケンプファーでもある雫によって女子部の側に転入までさせられてしまい、学園中の注目の的に。さらには、幼馴染・水琴まで戻ってきて…
まぁ、何だな…滅茶苦茶複雑な人間関係が築かれていった、っていう話ではあるんだけれども…自業自得だよね。そりゃ、あれだけ魅力的なメガネっ娘をひたすらないがしろにすりゃあねぇ…。
というか、今回は、女子部に入ってのドタバタがメインになったわけだけど、物語的には、新キャラの水琴はあんまり目立っていなかったような。勿論、主要キャラクターとしての出番はあるんだけど、むしろ、インパクト的には委員長・副委員長・会計の3人衆や雫会長と言った面々の方が強い。まぁ、雫会長は、今回の物語の首謀者なわけだから当然としても、3人衆は個人名すらないくせに、他の面々をくらいまくってる気がする。
しかし…難儀なことよのぉ…。百戦錬磨の女性キラーにして、男の自分が好きで、なおかつ、色んなところで敵対的な視線まで貰ってしまう、という素敵な状況。頭を抱えたくなるのはよくわかるよ。
…でも、自業自得。メガネっ娘の恨みは怖いのだ。
…って本の感想になってねぇな(阿呆)
(07年9月9日)

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