君を守りたい |
---|
著者:中嶋博行 |
学校で起こる「いじめ」の問題。学校では「人間教育」を掲げ、結果的にいじめ加害者の保護に終始してしまっている。そうではなく、いじめは「犯罪」という立場に立って、断固とした処置を取るべきだ、というのが本書の主張。 実のところ、私は著者とは少し立場が違うのであるが、似たような意見を持っている。暴行、恐喝…このような行為が学校の中では「いじめ」と言う言葉に曖昧化され、そして学校内での処分で済まされてしまう。つまり、学校内が「治外法権の地」と化していると感じるのである。その意味でも、著者の述べる「いじめ」=「犯罪」という図式をハッキリさせる、という考え方には賛成である。 ただ、その一方で私は著者の言っているものについて気になる点がいくつか。 まず、情報収集部・パトロール部の組織を学校が中心となって作るべき、という提言。ここが著者と私の立場の違いなのだが、私は、学校が処分の主体となることは期待できない、というのと同様に学校が調査の主体となることも期待できないと考えている。それは、学校は「いじめがなかったことにした方が得をする利害関係者」であるという考え方をしている為。「いじめがあった」ということが、大きなマイナス要因となる風潮がある中、学校がその調査に主体的に取り組むというかといえば大いに疑問である。同様に、学校が通報するか? という点も疑問である。 また、著者の言う「中心人物をピンポイントで処分する」という点についても、中心人物をどのように特定するか、その方法論が重要になる。著者が序盤で提示したいじめの例に被害者同士を戦わせる「シャモリンチ」があるが、一見、中心と思われる人物が影でそう仕向けられている、という可能性もある。これを調査するノウハウ作りは重要だろう(先日、いじめ加害者として元被害者が調べられ自殺するという事例があったばかりに余計に思うのだが)。 著者の述べるメッセージそのものについて、大まかなところでは賛同できるのだが、具体案などについて提示されていなかったり、反論が可能な箇所があるように思われる。 最後に、著者の母校でのいじめを撲滅した生徒によるパトロール部隊設立…というものについてであるが、私はこれは危険である、と考えている。というのは、これをいじめ加害者の中心人物がこれに加わってしまう危険性を孕む為である。先に学校が利害関係者と書いたが、同じように生徒も利害関係者である。そこに権力構造を作ってしまうのは、危険であろう、と考えるわけである。 (07年3月6日) |
この国が忘れていた正義 |
---|
著者:中嶋博行 |
現在、日本の刑務所では、犯罪者の「教育」が日夜行われている。しかし、犯罪者の「教育」をしても、高い効果が期待できるとはいえないし、また、被害者は救われない。犯罪者「福祉」社会を見直すべきである。 というのが、本書の主張になるだろうか。 直接、本書の内容と関係がないのかも知れないが、本書を読んでいる間、ずっと岡田尊司氏の『脳内汚染からの脱出』を読んでいるときと同じ気分を味わっていた。というのは、本書でもデータなどの変わりに個別の事例を沢山いれ、それで「これじゃあいけないのだ!」と言うのを煽りまくっているためである。両方とも同じ文春新書、さらに、中嶋氏が江戸川乱歩賞作家で岡田氏が横溝正史賞作家と小説家とのしての顔を持つ。この辺りの共通点から来るのかな? などと言う風に思うのではあるが…。 本書ではまず、アメリカにおける「犯罪者更生モデル」から「犯罪者隔離モデル」への変遷を記し、その後、日本での「更生モデル」の批判…へと話を展開させる構成となっている。 正直に言うのであれば、本書で書かれているもの全てに反対するつもりはない。例えば、日本における被害者救済システムがいかに貧弱であるかを指摘し、付帯私訴制度と刑務所労働を「賠償モデル」化することにより被害者救済をすべきである、であるとか、「いじめ」を「犯罪」として認知し、断固した対処をすべきである…などは賛成である。だが、本書に書かれている内容は、別個に分けて考えるべき問題を全てごちゃ混ぜにしてしまっている感があるのだ。 そもそも序盤のアメリカの例をそのまま日本に適応する必要があるのか? と言うのが疑問として浮かぶ。著者は日本でのデータなどを全く示さず、小林薫受刑者の事件などのケースだけでミーガン法などを出して、日本も監視社会化を進めるべきだなどと言う。だが、本当にこれは効果的なのか疑問がつく。著者はアメリカで、私刑などが起こっている、というようなものを書いているが、それ以上に、そのようなことにより、却って彼らを凶悪事件に駆り立てる危険性を私は危惧する(著者も、まともな職には就けまい、と書いているが、そうなれば食べるためや自暴自棄になって再び犯罪に走らせたりしないだろうか?)。 また、私が賛成と言った「賠償モデル」であるが、本書に書かれた民営刑務所と言うものにも疑問が浮かぶ。というのは、直前、アメリカで民営刑務所ができたが、様々な問題が発生していることも記している。それの改善案は示されない。また、著者は民営化すれば収益が上がる、と言うのだが、その根拠は「安い労働力が沢山あるから」と言うだけ。しかし、浜井浩一氏などの著書(例えば『犯罪不安社会』)では、現在、刑務所の受刑者はその多くが高齢者、言葉の壁のある外国人、そして暴力団関係者と言った状態で、むしろ健康な若者の不足に苦慮している、と言う。本当に、可能なのだろうか? そもそも、商売として成り立たせるためには、労働力は丁度良い数必要であるし、適材適所の人選が必要になる。犯罪を犯した人全てを受け入れる刑務所というシステムで成り立つのだろうか?(著者が参考にするアメリカでも、民営刑務所はごくごく一部である) 先にも書いたとおり、主張のいくつかには賛成なのであるが、根拠の弱さであるとかを含めて、腑に落ちない部分が多い。 (07年10月3日) |
黄金流砂 |
---|
著者:中津文彦 |
歴史学者の高村が何者かに殺害された。「あひる…」というダイイングメッセージを残して。新米新聞記者の法願、高村の弟子・広瀬は、それぞれ調査を開始する。 第28回江戸川乱歩賞受賞作。同時受賞に『焦茶色のパステル』(岡嶋二人著)。 資料を読み、それを紡ぎ合わせて一つにする。そういう意味では、歴史と推理小説というのは似ていると思う。歴史を別解釈にする、という「歴史ミステリ」なんてものも存在しているわけであるし。本作も、そのような魅力が詰まった作品と言える。 殺された歴史学者が持っていた一枚の古文書。その中に記された暗号。それを巡って奥州藤原氏、源義経に纏わる話が次々と出てくる。多少、小難しい説明はあるものの、この解釈であるとかは、まさに歴史ミステリといった趣で非常に面白く読むことができた。(この解釈を受け入れるかどうかは別にして)歴史であるとかが好きな人は楽しく読めるのではないだろうか? ただ、欠点もいくつか。まず、事件に関してであるが、トリックがかなり強引な時刻表トリックであること。時刻表トリックは、そもそもがアンフェアだと思っているのだが、それを承知の上でもちょっと…と感じる部分があった。もう1つ。これは、乱歩賞にありがちなのだが、最後がドタバタしてしまっている点。作品のまとめ方に難がある。この2つがどうも気になって仕方が無かった。 「歴史ミステリ」としての面白さは良かったのだが、「推理小説」としてはちょっと…という風に思った。 (06年5月6日) |
消失! |
---|
著者:中西智明 |
高塔市郊外の雑居ビル。バンド練習中、マリーが殺された。その頃、「息子」の裕二を溺愛する母、裕子はその裕二が何者かに殺害された場面を目撃する。一方、駅前のブティックの看板娘・純も忽然と姿を消していた。共通点は、美しい赤毛の持ち主ということ。そして、遺体・犯人ともに消失してしまった、と言うこと…。 実を言うとこの作品、何箇所かで「すっげーバカミス」みたいな評価をされているのを目にしていて興味を抱いた作品。確かに、その要素はある。けれども、「バカミス」で片付けるのもどうか、って言う部分もある非常に悩ましい作品(そういや、帯に綾辻行人氏も触れてたな)。何せ、何を書いてもネタバレになりそうだし。 ま、様々な意味で、「トリック」を主題に置いた作品なのは確か。メインのトリック部分に関しては(てか、どれをメインとするかも悩ましいが)、結構、偶然に頼っている部分も多いのでそこだけではちょっと…かも知れない。けれども、それをカバーするかのように、縦横無尽に様々なトリックを仕掛けてあって、読み終わって「確かに話題にはなるわな」と言うのはよ〜くわかる。部分部分に関して言えばある程度、読める部分はあったのだけれども、これ、全てを見破るっていうのはかなり難しいと思う。 色んな意味でこの作品は、突き抜けた作品ではある。私は、この作品、結構、好き。 (07年12月28日) |
DDD1 |
---|
著者:奈須きのこ |
精神疾患から、自らの身体をも異形のものとしてしまう「A(アゴニスト)異常症」のはびこる世界。そんな世界での左手を失った「悪魔払い」石杖所在と、両手両足のない美麗な迦遼海江の物語。 |
DDD2 |
---|
著者:奈須きのこ |
『S.vs.S』(前後編)、『/FOMAHUNT.』『Vt,in day dream.』の4編を収録。 うん…秋星さん、凄いなぁ…(笑) 前作のツラヌイさんとかも、かなりキャラが強かったけど、今回はさらに濃いもんなあ。しかも、こっちは、かなり物語に関わってくるだろうし。…お馬鹿、ですなぁ…。 とは言え、今回は物語の中心は、『S.vs.S』が殆ど。 なんていうか…奈須さん…スポ根アニメに鞍替え? 野球を題材にしての物語。A症候群を題材にして、殺戮だとか何とか、色々とあったけどさ…中心になっているのって、二人の「天才野球選手」の孤独、すれ違い、一種の友情…みたいな部分。近作に関して言えば、それほど、仕掛けとかがメインになっておらず、より、それが強く出た印象。 それにしても…C県で、国際空港があってって…支倉市って、N市だったんだ(阿呆) コアラヶ岡って、てっきりS市だと思っていた(阿呆) あとの2編に関しても、仕掛けなどはなくて、比較的ストレート。そして、所在の出番も少なかったけどね。 最後の『Vt,in day dream.』は、頁数も少なく、最後の展開からして、次巻への繋ぎって感じですな。マトさん…凄すぎです。 (08年1月10日) |
ぷいぷい! |
---|
著者:夏緑 |
寮暮らしの高校1年生・新木陣が考古学者の両親から送られたランプを磨くと現れたのは…なんと、メイド服に身を包んだ学園のアイドル・座堂シエラ! 彼女は、ランプの魔神の末裔で、ご主人様の願いをかなえて一人前の魔神にならないといけないというのだが…。 なんつーか…ものごっつい濃い連中ばっかりだな、おい!!(笑) とにかく、大量の人々が出てくるんだけど、皆、そろいもそろって濃いんだわ。でも、ちゃんとそれらのひとびとが描き分けられているのは好印象。 少なくともこの巻について言えば、前半の登場人物達のやりとりが面白い。朴念仁な陣、勝気なお嬢様のシエラのやりとりを始めとして、寮長の右京とか、ルームメイトの夕也などなどとのやりとりが…。とにくに、シエラの親父良いな。陣、シエラ、親父の全くかみ合っていないやりとりには大笑いした。 逆に後半の魔物退治みたいな展開はちょっと…って感じ。強引さもあるし、なんか前半のテンションがちょっと落ちてしまった感じで。 ただ、それでも面白かったし、2巻以降の評判も良いだけに追いかけてみようかな、と思う。 (07年2月1日) |
ぷいぷい2! |
---|
著者:夏緑 |
「2度とシエラを呼び出さない」と決めた陣。だが、ある日、陣のすむ男子寮が停電に。真っ暗な中、懐中電灯を探す中、うっかり、ランプを擦ってしまって…。 |
ぷいぷい3! |
---|
著者:夏緑 |
季節はゴールデンウィーク。寮生たちが、帰省する中、家がない陣は、アークのヒントを探すべく伊勢へと旅立つ。だが、なぜか新幹線の中にはシエラが…。シエラに振り回されるながらの伊勢参りが始まる…。 |
ぷいぷい4! |
---|
著者:夏緑 |
試験勉強のため、かつてシエラが泊まったことのある高原のペンションへと赴いた陣とシエラ。だが、そこでは、オーナーの妻が失踪し、息子の水斗はショックでふさぎこんでいた。同情したシエラは、自分が水斗の母の替わりになる、と言い出して…。 うん…前巻までとは打って変わって、一気にラブコメっぽい展開になったな。二人とも、互いのことを意識しまくりで、なんか、やたらに初々しいなぁ…というか、若いなぁ…というか、青春じゃのぉ…というか…(笑) 今回は、前後半2話の中篇という感じなのだけれども… 前半の『湖の少年』は、とにかく、話のズレっぷりがすばらしくて笑った。試験勉強が、水斗の母代わりになって、なぜかペンションの経営改善になって…とノンストップで話が脱線していく様が、お見事。勿論、最後はしっかりと脱線しすぎて元に戻ってくる辺りのお約束も押さえていてくれて好きだなぁ。 後半、『われらスチャラカバンド』は、非常に「青春!」てな感じの話。普通に、毒呂ちゃんがかわいいんですけど。ぴぴるぴるぴる〜(違) 明らかに、毒呂が夕也に…ってのは、わかるんだが…氷室(姉)さんと同じようになりそうなのが…。今回、一応はバトルがあったけど、やっぱりこの程度で、中心に添える必要は無いな。うん、このくらいでちょうどいい。期待通りの出来で素直に面白かった。 (07年7月6日) |
ぷいぷい5! |
---|
著者:夏緑 |
軽音楽コンクールも終わり、いつもどおりの生活に戻った陣。またもやシエラのトリックによって呼び出してしまったところにやってきたのはてんぱった啓太。「愛花さんと別れてください」という彼の主張に…。 と、まぁ、今回もまた3作の連作短編みたいな作品。 うん…やっぱり、このボケと微妙にボケたツッコミの応酬は素晴らしい。前回は、比較的、薀蓄っぽいのが少なかったけど、今回はそれもかなり復活しているし。そして、やはりマトモな奴がおらんしよぉ…(笑) 啓太…なんか、ここまで黒いとは思わなかったよ。自分の容姿とかまでちゃんと計算できているのね。しかも、姉ソックリのアレっぷりもあるし。毒呂さんと、シエラのダブル毒舌攻撃もなかなかねぇ。ある意味、一番、マトモなキャラってアルフじゃないのか? という気がしてきたよ…うん…。一番、素直にラブコメしているしね、この人。今回は右京とか、あの辺りの出番が少なかったのはちょっと残念だけど…それぞれ、キャラクターの味が良く出ていてやっぱり楽しいわ、これ。 さて…私も…「萌え〜! 萌え〜!」と言いながら、トーレム人形でも作るか…(ぇ というか、トーレムの顔文字が連呼されまくっているんだけど…著者、かなり気に入ってる、これ? (07年8月28日) |
ぷいぷい6! |
---|
著者:夏緑 |
アークダイモンによって赤ん坊にされてしまった陣。魔法が解けたことで、そこからは解放されたものの、目が覚めた陣は素っ裸でシエラの隣に寝ている、と言うシチュエーション。トーレムの協力もあって、何とかその場はごまかすものの、意識してしまう。それが、シエラとのすれ違いになって…『絵本の国の猫かぶり』ほか、2編。 やっぱり可愛いなぁ…トーレムってば。135頁の挿絵とか、もう最高やわ(笑) まぁ、それは良いんだけど、物語としての本編みたいな部分は、『絵本の国の猫かぶり』になるのかな? 3編目の『パジャマでお邪魔! 座堂家に行こう!』も二人の関係が進展したり、次回への引き、と言う意味で重要だったわけだけど…。 何故か、本田さんまで陣争奪戦に参戦しているのはあるんだけど…本田さんがどういう狙いであるのか、とか、そういう存在なのか? もあり、かつ、アルフ、シエラの対決、アークダイモンとの戦い…と、『絵本の国の猫かぶり』は、作品のエッセンスが詰まっていたように思う。 反対に、『パジャマで〜』は、試験勉強のために、陣たちがシエラの家へ…ってことなんだけど、何だかんだで、周囲の人々に気を使うシエラの姿だとか、そういうのが丁寧に描かれていて、展開としては地味だけど、話としては好き。まぁ…そこでしっかりと波乱の種を撒いている辺りが流石とは思うけど。 『夏だプールだスク水だ!』は、最も頁数が少ないこともあるんだけど…完全に番外編扱い。啓太、完全にキャラ、ぶっ壊れてます。まぁ、変態キャラは変態キャラで良いんだが…やっぱり、結構、鬱陶しいキャラになっているな(笑) こっちも、愛花との関係が進展していくのかな…? どうでも良いけど、ラストに「お詫び」を入れる辺り、氷室さんに対する作者の愛を感じる。 (07年12月4日) |
ぷいぷい7! |
---|
著者:夏緑 |
赤点をとったことで留年の危機に立ってしまったシエラ。三者面談を前に、心細いシエラだったが、陣には連絡がつかない。その頃、陣はアルフとともにアークのあると思しき京都へ向かっていた。だが、そのことがシエラとすれ違うことになって…(『疾風怒濤の三者面談』) 他、計3編。 確かに、内容紹介に「風雲急を呼びまくって」とあるけど、確かに風雲急を呼びまくりだ。そして、シリーズの完結が一気に近づいた感じ。 『疾風怒濤の三者面談』で、陣とシエラが対立、結びついて、再び…になって、しかも、親父&母親登場となって、そこで本編部分は終わりかと思ったら、3編目の『邪神降臨・誰が邪神よ!』て、陣の親父が出たり、本田さんの正体がアッサリと判明してみたり…で急すぎるわ(笑) しかも、これまで秘密にしていた部分も、なんか、ごくごく普通に受け入れられているしさ…何この寛大な人々。なんか、さぁ、みんなで最終決戦だ! って感じの終わりだもんな…。 その一方で、番外編とも言うべき『渚のビーチプリンセス!』でも、右京と氷室さんの物語が一応の決着を見ちゃうし…。なんていうか、これまでのところ、何だったの? って感じはあるんだけどね。啓太とかは残っているけど、脇役キャラたちのところも整理した、って感じなんだよな…。 本当、これで、完結が見えた…って感じだよね。アークダイモンが残り少ない、ってのはわかっていたけど、それでも前巻の今巻でここまで一気に物語が動くとは思わなかった。 (08年1月7日) |
タロットの御主人様。 |
---|
著者:七飯宏隆 |
陰陽道の占家に生まれた高校生・秋人。しかし、彼に宿った能力は片目だけという中途半端な状態。そんな彼の元にある日、アメジスティアという少女が、タロット占いを求めて現れる。しかし、魔力を秘めたタロットをばら撒いてしまう。タロットに取り付かれた人を救う方法はただひとつ。その人に、秋人が接吻をすること…。 |
イリスの虹 |
---|
著者:七月隆文 |
平凡な高校生・省吾は、怪物が人々を「食う」場面に遭遇する。そして、自らも食われそうになったその時、「正義の味方」を自称する少女・入州帚に助けられる。彼女によれば怪物・ハーピーは、その人間の「情報」を食うのだと言う。 ということで、テーマは「情報」になるのかな。実際、物事を認識するのは視覚情報だったり、触覚・嗅覚だったりするわけで、それを失ってしまう。食われた人間は、いるんだけれども、誰にも認識してもらえない。何かをすることができない。一方で、情報の糸を手繰ることのできるヒロイン。その辺りの面白さはあった。 けれども、なんか、全体的に見ると、キャラクター造形とかがあまりにも「お約束」過ぎるかな? という感じ。朴念仁の主人公とか、ツンデレキャラの帚とか…。その他の部分でも「どっかで見た」というようなのが多くて「あれ?」という感じ(というか、なんか、シャナっぽいんだよね、この作品。シャナは小説版読んでないけどさ(ぉぃ))。帚とハーピーの関係についても投げっぱなし感あるし…。 なんか、平凡…という感じがした。 あー…ヒトミちゃんは良い味出してたと思う、うん(笑) (06年1月11日) |