ナイト・ダンサー |
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著者:鳴海章 |
第37回江戸川乱歩賞受賞作。同時受賞に『連鎖』(真保裕一著)。 M航ジャンボ機の貨物室に積まれていたアルミを浸食する細菌が漏れ出した。その影響を受けて飛行機は飛行困難に。そして、そのM航、細菌を巡り各国の思惑が錯綜する…。 えっと…これ、江戸川乱歩賞…だよなぁ…。ミステリ作品じゃないんだけど(笑) 基本的な物語の流れは単純。アルミを溶かす細菌により、浸食されたジャンボ機。それに気付いたジャンボ機は、不時着先を探す。一方、生物兵器としての価値すらも見出せるその細菌の存在を巡り各国の思惑がうごめき、飛行機、ヘリ…などによる戦いが繰り広げられていく…というもの。 とにかく、その機械であるとか、はたまた戦闘であるとかに関するこだわりが図抜けている作品。他の乱歩賞作品と比較すると、殺人事件だとかがあるわけではなく、ただひたすらに戦闘、アクションが描かれており、かなりの異色作だと思う。最近の受賞作だと『Twelve.Y.O.』(福井晴敏著)などが近いかも。 それだけに、好みも別れそうな気がする。機械の描写だとか、そういうのへの拘りは、好きな人には溜まらないだろうが、苦手な人はとことん苦手だろうし…。少なくとも、ミステリ小説として期待すると、ちょっと驚くことになると思う。 (06年1月3日) |
輓馬 |
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著者:鳴海章 |
事業に失敗して借金に追われ、妻とも離婚。全てを失った矢崎は、大学に進学して以来、疎ましくさえ思っていた兄の元へと転がり込む。ばんえい競馬の調教師をする兄の元で手伝いをしながら、人々や馬と触れ合い…。 |
猫は知っていた |
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著者:仁木悦子 |
開業医を営む箱崎家へと下宿することになった仁木雄太郎、悦子兄妹。部屋として空いている病室をあてがわれた二人だったが、彼らが引っ越して早々、入院患者の男と院長の義母が失踪してしまう。男からは、電話によって無事が確認されるものの、義母は翌日、他殺体となって発見される…。 第3回江戸川乱歩賞受賞作。 これまで、私のブログでは歴代の乱歩賞受賞作を読んでいたのだが、ついにここまで来たか、という感じ。この第3回乱歩賞作品である『猫は知っていた』が、ミステリー新人賞となって初の受賞作だから、である。そして、これを読んで一番に感じたのは、「50年前の作品であるのに、全く古いと感じない」という点。細かい固有名詞であるとかには、時代を感じる部分はあるのだが、作品の根幹的な部分、そして作品全体から受ける印象は全くそれを感じないのだ。そして、読み終わって「気持ちが良い」と感じさせてくれる。 作品の構造としては、もうお手本にして良いような本格ミステリ。いきなり起こった2つの失踪事件。そして、そこから始まっていく連続殺人。防空壕の中で起きた不思議な事件、アリバイトリック…と言ったものを中心に謎が展開し、それを探偵役の仁木兄妹が論理的に解いていく。テンポの良い流れと、しっかりとした論理で説明される真相…と、気持ちよく話が進む。 と、同時に、この作品の良いところは、主人公がすごく魅力的なところだと思う。事件そのものは、非常にドロドロとしたものだし、それを強調しようと思えば出来ると思う。けれども、それを行動力があるヒロイン・悦子とそれを諭す思慮深い兄・雄太郎というコンビによって語らせることで、からっとした明るい作風に仕上がっている。これも、作品を読んでいて「気持ちが良い」と感じさせてくれる一因だろう。 トリックについては、多少、それは可能か? などと思うような部分はある。あるけれども、それを差し引いても十二分に評価できるだけの出来はある。細かいところを少し修正して、最近書かれた作品だ、と言っても十二分に通用する作品ではないかと思う作品だ。 (07年3月28日) |
クビキリサイクル 青色サヴァンと戯言遣い |
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著者:西尾維新 |
絶海の孤島に住む財閥令嬢。その元へ集まった天才達。そんな中で発見された首無し死体。工学の天才・久渚友と、その友人・いーちゃんはその事件に挑む。 現在、最も売れている作家の一人になった西尾維新のデビュー作。第23回メフィスト賞受賞作。 う〜ん…最初にこの作品を読んだときとは、またかなり違う印象になったなぁ…。 今、改めて読んでみると、かなり素直な本格推理小説。まぁ、理屈をこねくり回す…なんていうような作風そのものは、その後のシリーズにも継承されているんだけれども。よくよく考えてみると、このトリックは相当に無理がある。いくら…とはいえ、痕跡が残らないわけが無いのだが…。 また、最近になって『すべてがFになる』を読んだのだけれども、それと設定そのものがかなり似ている。絶海の孤島、そこに隠れ住む令嬢、事件に挑む男女ペア。こうやって考えると、森博嗣へのオマージュ的な意味合いもあるのかなぁ…なんてことを感じざるを得ない。 (05年6月28日) |
クビシメロマンチスト 人間失格・零崎人識 |
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著者:西尾維新 |
鴉の濡れ羽島で起こった密室殺人事件から2週間。一月遅れで大学に復帰したいーちゃんは、学校の仲間達との平和な生活を満喫していた。だが、その仲間の一人が何者かに絞殺された状態で発見される。そして、連続殺人が…。 ということで、『クビキリサイクル』の続編にあたる「戯言シリーズ」の第2段。今作も、作品の中心になるのは、連続殺人であることは間違い無いのだが、一方で、このシリーズを形作る世界観の一つである「零崎一賊」の登場があったりで、ある意味では「戯言」シリーズの形が出来上がってきたような作品のように思う。正直、トリックの方は「それアリですか?」って感じがする、ある種、かなりアンフェアなもの。注意深く読めばわかるとは思うんだけれども、こういう風に来ますか…と思ったしね。その辺、好みが分かれそうな気がする。私はちょっと腹が立った(笑) (05年7月4日) |
クビツリハイスクール 戯言遣いの弟子 |
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著者:西尾維新 |
人類最強の請負人・哀川潤に連れられて(拉致されて?)、女子高に潜入捜査することになったいーちゃん。目的は一つ、学園内にいる依頼人・紫木一姫を救い出すこと。だが、そこでは…。 戯言シリーズの第3段に当たる作品で、密室本の一つ。ま、これで、順序は入れ替わるけれども、「戯言シリーズ」を『ネコソギラジカル』を除いて書評を書いたことになるし。 うん、第1段の『クビキリサイクル』は純粋な本格ミステリだったのが、『クビシメロマンチスト』で少しずつ離れる装いを見せて、この作品辺りで、完全にキャラクター先行の作品になった感じがする。この作品でも、いーちゃんと哀川、紫木…と言った面々のやり取り。そして、ある意味では「ゲーム感覚」なんて言われるような形で起きる事件…と、シリーズの形が出来たと言うか…。 とは言え、事件そのものは起きるし、「密室本」らしく、密室殺人もある。…あるが、物凄く素直で単純。密室本ということで、トリックだとかを楽しみにしていた場合はガッカリかもしれないけれども、『クビシメロマンチスト』のトリックがどうかなぁ…と思っただけに、この素直さが却って気に入った。 (05年7月26日) |
サイコロジカル |
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著者:西尾維新 |
最早、「ミステリ」じゃないな、こりゃ(笑) この作品は、これまでに比べてかなり玖渚友といーちゃんの関係に深く突っ込んだ印象。 しかし、『クビツリハイスクール』あたりからそうだが、かなり内輪ネタ的なものが多くなってきた印象。 |
ヒトクイマジカル 殺戮奇術の匂宮兄妹 |
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著者:西尾維新 |
これまでのシリーズでもそうだったので、トリックとかに関してはそれほど期待していなかったのだが、それは正解だった。しかし、もの凄い大技というか、反則技というか・・・そんなトリックだなぁ・・・。 何かシリーズを重ねているので仕方が無いかも知れないのだが、内輪ネタの割合が大きくなってきて、会話中のギャグなどもマニアックなものが増えてきているような・・・。いないとは思うが、この作品から読み始めた人は話に付いて行けないと思われる。 評価が分かれることは確かなのだろうが、悪いとは思わない。 |
ネコソギラジカル<上> 十三階段 |
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著者:西尾維新 |
「よう、俺の敵」。狐面の男がささやく。哀川潤の失踪、姫菜真姫の「早過ぎる」死、十三階段の成立…。物語が加速する。 |
ネコソギラジカル<中> 赤き制裁VS橙なる種 |
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著者:西尾維新 |
いーちゃんの前に現れたのは、目の前で死んだはずの人類の最終存在・想影真心だった。真心の前に、萌太、崩子、出夢は次々敗れ、哀川潤もなす術無く敗れる。だが、狐面の男は意識を失っている哀川潤を連れてアッサリと撤退する。 …しかし、よくまぁ、ここまで追っかけたもんだ…このシリーズ(笑) |
ネコソギラジカル<下> 青色サヴァンと戯言遣い |
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著者:西尾維新 |
突如訪れた玖渚友との決別。想影真心の暴走。復活する哀川潤。物語が奔流しはじめる。 こっからは、むしろ、このシリーズ全体を通しての感想。 |
零崎双識の人間試験 |
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著者:西尾維新 |
「戯事」シリーズの番外編にあたる作品でタイトルのように零崎一賊が話の中心。 本編では、(形の上で)謎解きを用いた「本格」の形をとっているわけだが、この作品に関してはそのようなものは存在しない。「殺人鬼」一賊の一人である零崎双識と、殺人鬼になりかかっている少女・伊織を中心として、戦闘・殺戮のシーンの連続となる。そういう描写だけに、読む人は選ぶだろうが、個人的には、本編の強引とも言える謎解きよりも、こちらの方がストレートで好きだ。 本編で出てきた人物・キーワードなどが多数出ているので、シリーズを読んでいた方が良いのは確かだが。 (05年2月16日) |
零崎軋識の人間ノック |
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著者:西尾維新 |
「零崎一賊」。殺し名の第3位に列せられる殺人鬼の一族。「愚神礼賛」こと、零崎軋識は人識と共に敵の撃滅に向かう。sかし、そこに待っていたのは周到な罠だった…。 西尾維新作品を読むのも久しぶり。本作は、タイトルからわかるように、「戯言シリーズ」の番外編と言ったところなのだが、舞台となるのは『クビキリサイクル』から始るシリーズの5年前。「戯言シリーズ」でお馴染みの面々の若き日の模様が、軋識を中心として描かれる。 …なんていうかね…。軋識以外の面々が強烈過ぎる(笑) 主役であるはずの軋識が、完全に食われてるよ(笑) 軋識といったら、最初こそ活躍する物の、それ以降は、どちらかっつーと「ちょっと待て!!」とツッコミを入れる読者の視線になっている感じ。 …というわけで、「戯言シリーズ」に登場する面々の若き日が語られるわけだけれども…人類最強、すげぇ(爆笑) 5年前はさらにはっちゃけてるよ(笑) 双識兄さんもすげぇ(笑) 『零崎双識の人間試験』のときは、まだ何だったけど、今回は文字通り「変態」だ…。そりゃ、子荻も「何か大切な物を失った」気がするよ…(笑) まぁ、そんな感じで、シリーズのオールスターの勢ぞろい、という感じ。完全に番外編という感じではある。それぞれに張り巡らされた人間関係も含めて、シリーズをより楽しむ為には良いと思う。 (06年11月29日) |
新本格魔法少女りすか |
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著者:西尾維新 |
『ファウスト』誌で連載中で、完結していない連作中篇集なので「1巻」とでも言ったほうが良いか。 西尾維新の作品というと、「戯言」シリーズのように、ミステリの形を取りながらも禅問答とでも言うか、物事に対する様々な思考であるとかの比重が大きいのだが、この作品は「戯言シリーズ」以上にその傾向が強い。 りすか、がリストカットからの連想だったり、残虐とも言えるようなシーンが挿入されていたりで、好みは分かれると思う。少なくとも、小学生の冒険物語、として捉えちゃいけない。・・・って捕らえる奴はいないか・・・。 |
新本格魔法少女りすか2 |
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著者:西尾維新 |
ま、当たり前のことながら、この巻単独で読んでも全く世界観についていけないと思う。『ファウスト』誌での連載作品ということもあるのか、その辺りのフォローは殆ど無いし。 1巻では、どちらかと言うと局地戦という印象だったものの、今回は城門管理委員会、6人の魔法使いと次々と登場し、ストーリーが核心へと突入するための準備完了と言ったところ。人間関係の方で言えば、キズタカとりすかの関係に、ツナギが入って三角関係っぽくなってきたり、第6話の『出征!』ではキズタカの過去、家族関係について触れられたりと、ここまで出てこなかった人物達の内面的なものが大分描かれているように感じる。…りすか本人の出番、あんまり無いけど(笑) しかし、雑誌未掲載の3話のエピソードが4話、5話にもどんどん出てくるっていうのは、雑誌『ファウスト』を購入している方としては、たまったもんじゃないだろうなぁ…。 |