しにがみのバラッド。2
著者:ハセガワケイスケ
4編を収録。とりあえず、先に言わせてください。モモ、仕事らしい仕事してないぞ(笑)
『水のないプール』。部活もやめ、気力の無い状態の水月の前に現れた死神。彼女は「あなたは死ぬ。だから精一杯生きないとね」と告げる…。ごめん、序盤でオチは読めた。無気力な少年の再生の物語、とでも言うか…。終わりがあるからこそ、というメッセージのある物語とでも言うか…。まぁ、モモの存在感はあるんだけど。
あとの3編で特筆すべきなのは、一番最後の『ひどく綺麗な透明な空。』かな? 他の作品は、どちらかと言うと「普通の人間」が死、死神という存在に出会って…という話が展開されるのだが、この話だけは、モモを含めた「死神の世界」(?)の話。同僚であるはずの死神に突如攻撃されたモモ。その死神について調べるのだが…。この話に関して言うと、完結した、という感じではない。この辺りは、今後も少しずつ続いて行くのだろうか?
しっかし…『スノーリバース』なんて、モモ、いなくても話としては十分に完成していたんじゃないだろうか?
(06年5月31日)

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しにがみのバラッド。3
著者:ハセガワケイスケ

『ビー玉と太陽光線のかなた。』『きのうとしたの其処らへん。』『ほしの空、ひとしずく。』の3編を収録。
6月に発売されたラノベを読むのが一段落したので、久しぶりにこちらを再開。3巻は、みとみーさん推奨のメガネっ娘委員長の話を収録というのもあったりする(笑)。
さて、後書きで著者も触れているんだけれども、この巻はちょっと趣向の変わったつくり。1編でもちゃんと物語としては完結しているんだけど、収録されている本編2編が表裏になっている、連作短編風の作りになっている、とでも言うか。…まぁ、それほど互いが重なると言う事は無いんだけど。
本編2編は、アッサリと判る表裏以外にも対照的な設定が多いな、と感じる。例えば、『ビー玉と』のカンタロウとトマト、『きのうとあしたの』のやえ子と壱吾。物語が始まった時、その後の二人が辿るであろう状況の対照性。二人の気持ちの対照性。二つの話を敢えて対照的にして、という趣向は決して珍しいものではないのだけど、どちらも綺麗にまとめてきたな、という感想はやはり持てる。…『きのうとあしたの』に関しては、モモが殆ど出てきていない気がするんだけど(笑)
『ほしの空、ひとしずく。』は、モモ、ダニエルを巡る死神の世界での話。こちらは、2巻からの続きでもある。ある意味じゃ、こっちが本編とも思えるんだが…。
シリーズ3作目。だんだんモモが仕事をしなくなってきているような…。
(06年6月29日)

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しにがみのバラッド。4
著者:ハセガワケイスケ
『星くずのため息。』『ホタルノヒカリ。』『しちがつなのか。』『青すぎる空の詩。』の4編を収録。
うん、ここまで来ると殆どモモの出番がねぇや(笑)
で、この巻の趣向としては、過去の作品とのリンクってところかな。『ホタルノヒカリ。』に再登場するコータなんかは、思いっきりそうだけど、『星くずのため息。』『しちがつなのか。』も微妙に、これまでに出てきた話とリンクしているし。
ただ、最初にも書いたけど、「死をきっかけにした物語」ではあるんだけど、直接的にモモが関わるっていうことはなくて、(多分、モモの導きはあるんだろうけど)自分で勝手に成長するような感じ。ダニエルのボヤキ節で綴られる(笑)『青すぎる空の詩。』で、「人間に関わっちゃいけないのに…」と連呼されてるんだけど、今回のエピソードではそれほど「関わっている」とは思えないんだな…これが。まぁ、人間の側が気付かないような関わり方はしているんだろうが。
もうちょっと積極的に関わるエピソードが描かれていても良かったかな? とか思ったり。
(06年8月1日)

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しにがみのバラッド。5
著者:ハセガワケイスケ
『あのときそのとき、でっきぶらし。』『スイカと星の種。』『しにがみのうた。』『花の環』の4編+ショートエピソードの構成。
今作に関して言うと…ちょっとなぁ…という感じ。何か、迷走気味という感じがどうしてもする。
というのは、今作、最後の『花の環』はいつもどおり、モモを中心とした話(しかし、不思議なエピソード)なんだが、他の3編には共通点がある。それは、皆、超能力というか、魔法というか、そういう人外の力を手にした存在が大きく関わる話という点。これまで、「普通の人間の普通な生活」に「死」が関わって、という話だっただけにどうしても違和感が残る。特に、物語の根幹に、超能力が関係ない、ってことも多いだけに余計に。
インパクトとして一番あるのは、『しにがみのうた。』。比較的、ほっとした結末を迎える傾向が多い中、超能力を用いた殺し屋・アリスの叫び、というテーマはなかなか面白い。ただ、超能力が無くても物語は成立したと思うのだが。作品のテイストを踏襲している、という意味では『スイカと星の種。』。一応、こちらにも超能力みたいなものは出てくるけど、物語そのものに不可欠だし、また、ある意味では「普通」の範疇からはそれほど外れていないだけにバランスが良い。個人的には、これが好きかな。
作中では「イレギュラー」という表現で呼んでいるんだけど、こちらの方向に進んでしまうと、作品そのものを壊しかねないと思うだけに、ちょっと5巻は…という風に感じた。
(06年10月23日)

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しにがみのバラッド。6
著者:ハセガワケイスケ

『はじっこの少女。』『きみがあるく塀の上。』『彼女の風景。』『言の花。』の4編を収録。
なんていうかさ…救いがねぇ…(苦笑) このシリーズって、基本的には「死」をきっかけにして、そこに纏わる人々の様子を描くという作品で、例えば、死んでしまった人を思って哀しんでいる人が、その死者の言葉で立ち直る、とかそういうところがあったんだけど、今回に関して言うと、その救いの部分が…。
例えば、理不尽に殺され、そのまま世界を見守っている少女を描いた『はじっこの少女。』。とことんついていない男が、「自分を殺して」という女子高生と逃避行をするハメになる『彼女の風景。』とか、どれについてもね…。ついでに言うと、モモの出番、ますます減ってるし(笑)
勿論、そういう話だってあって良いと思うんだけど、シリーズを重ねて、かなり苦しくなってきたのかな? というのを5巻あたりから感じるんだけど。前回は、イレギュラーという反則気味の作品を出しちゃったし、今回もこれまでの方向性を変えた作品。どうも、違和感が感じられてしまう。
そんなのばかり感じてしまった。
(06年11月16日)

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しにがみのバラッド。7
著者:ハセガワケイスケ

『このこどこのこ、このこねこ。』『キミが生まれた夏の終わり。』『花の戯れ。』の3編を収録。
…ではあるんだけど、実質的には、前2編は併せて1編という感じで、2編。しかも、『花の戯れ。』は、いつもどおりの死神の世界での人間関係を描いてる短編なだけに、実質的に1編という感じではある。そういう意味でも、これまでのシリーズという印象。
で、肝心の内容っと。
(実質的に)再婚した両親の連れ子同士として知り合った惺と、綾・紗耶の双子姉妹。家族でありながらも同時に生まれる複雑な関係…。そこへ生じた「死」…。ある意味じゃ、原点回帰へ向かったのかな?
ただ、短編ならばともかく、長編としてみると、もうちょっと深く踏み込んで心情とか、そういうのを描いても良かったかな? という感じ。意外性みたいなものがなくとも、それは構わないんだけれども、詩のような感じのタッチの文章は、こういう「ドロドロの心情」を描くのは不向きな気がする。普段の話とくらべれば、一行が長いんだけどね(笑)
そうね…回帰っていう方向性そのものは良いと思うんだけど、もっと短い形でまとめるほうが作風的にも良いんじゃないか、という風に感じた。
(07年6月12日)

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しにがみのバラッド。8
著者:ハセガワケイスケ
『ストロベリぃノート。』『ちいさないのり。』『てのひら銀河。(前後編)』『花の旋律。』の5編を収録。…とは言え、実質的に4編だし、『花の旋律。』『ちいさないのり。』は、ボリューム的にもかなり小さいのだけれども。
なんていうか…読んでいて、かなり「ネタ切れ」を感じてならないな…こりゃ…。いや、作品として、爽やかな気持ちになれる、っていう意味では、そうなんだけれども、もう、殆ど「死」「死神」みたいなもの関係ない。特に、『てのひら銀河。』辺りは、それが強くて、マコト、トイロ、クロエの3人の微妙な三角関係を描いているだけ、って言う感じだし、『ストロベリぃノート』もあまりモモの存在とか関係ないんだよな…。これまでも、モモがあまり活躍していない、みたいなことは散々書いていた気がするけど、この作品に関しては、そもそも「死」が殆ど意味を成していない状況すらあるからね。話としては悪くないのだけれども、コンセプトそのもんが崩壊してしまっている感じがして、正直、かなり残念。
そういう意味では、30頁弱の作品ながら、『ちいさないのり。』が一番「らしさ」を感じられて好きかな。主人公が、野良猫という意味じゃ、イレギュラーかもしれないけど、それでもね。
うーん…正直、かなりこのシリーズを追いかけるのが辛くなってきた…と感じるな…。次巻でも同じようなら、残念だけど切ろうと思う。
(07年8月2日)

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みずたまぱにっく。
著者:ハセガワケイスケ

水田マシロ、13歳。超名門校に通うアバウトで庶民派。学校に掛け合って得たバイトは、学生寮の「お手伝い」。学生寮と言っても、迷路になってしまうくらいの豪邸。そこに暮らすのは、学園のアイドルの少女4人。けれども…。
うーん……。なんか、物凄く中身が薄いというか、何と言うか…。冒頭のところの通りに、学生寮のお手伝いをすることになったマシロは、そこに住む4人の少女たちと出会う。ファンクラブもあるほどの彼女たちだけれども、実は秘密があって、それをひょんなことで知ってしまい…。
と実にベタな展開。そして、そこで物語の3分の2近く終わっているんですけど…。一応、4話構成で、序盤は、どんでん返しみたいな形にはなっているものの、結構、露骨に描かれているからむしろ、「こんなバレバレのどんでん返しはしないよね?」と逆に疑ってしまった。
『しにがみのバラッド。』シリーズ同様、非常に改行が多く、凄くスピーディというか、実質的な分量は少ないんだよね。でもって、『しにがみのバラッド。』の場合、それを逆手に取っている気がするんだけど、本作の場合、そういうわけでもなくて…。色々と秘密とかを抱えている…ってのはあるんだけど、その辺りは今巻では投げっぱなし。その辺りは…ってのがないわけではないんだけど…。
うーん…微妙。
(07年11月26日)

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サインをつかめ!
著者:長谷川昌史
不良の溜まり場になっているバスケ部に入部させられてしまい憂鬱な気持ちを抱えている修一。片想いの彼にどうにか振り向いてもらいたい地味な少女・律子。刺激を求めている、孤高の美少女・玲奈。皆に幸せになって欲しいと願う天体オタクの誠司。それぞれの一日がまた始まる。そして、そんな彼らの通う学園には「サイン」という幸福のチェーンメールの噂があり…。
うーん…変な話だが、第5章までなら、全く文句無しに「面白い」と言えるんだ。それぞれ、色々な事情を抱えた4人。それぞれが、それぞれに動いて、それが互いに影響を与え合って次の行動へと流れて行く…。そして、そこに伝わる「サイン」というタイトルのメールに書かれた一言でそれぞれ、ちょっとその状態から抜け出して一歩を歩み出す…という形になるのも良いし。
…というのが、5章まで。
問題は、最終章なんだよな…。ここで、そこまでで明かされていなかった不思議な部分。食い違っている部分に関する「解答」が示されるわけだけど、これがちょっとなぁ…という感じ。一応、辻褄は合うんだけど、正直、「黒幕」さん、豹変し過ぎ。それまで一体、何だったの? って感じだもん。最終章を読んでガックリとした。
5章までは本当、面白かっただけに、最後がなぁ…。ここだけ直して欲しい、と思うよ…。そのくらい勿体無い。
(07年3月18日)

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狼と香辛料
著者:支倉凍砂

行商人のロレンスは、麦の収穫期を迎えた村からの帰り、荷馬車で眠る少女を見つける。狼の耳と尻尾を有する少女は、自らを豊作の神・ホロであると告げる。北へ帰りたい、というホロと共に旅を続けるロレンスの前にとある儲け話が転がり込み…。
うん、なかなか面白かった、この作品。
神の化身の少女と行商人の男、という組み合わせを聞くと、なんか良くあるパターンのファンタジーかと思うんだけれども、意外と現実離れした展開というものは無い。むしろ、行商人であるロレンスが、取引をするときの駆け引きであるとか、そういうところがメインと言っても良いだろう。
中世が舞台、というのがちゃんと活きているところも個人的には好感触。ただ、神の化身ということで安易に設定したわけではなく、教会の権力でるとか、人々の信心であるとか、はたまたそこからの脱却…。そういう時代の流れなんかがちゃんと関わってくる辺りも良いんじゃないだろうか?
ま、細かいところを見れば、当時の行商人の様子であるとか、色々と矛盾点があるのかも知れないけれども、それを差し引いても良い作品じゃないかと思う。

もっとも、これ、続編が書けるような形で終わっているが、ロレンスとホロがベタベタの恋愛感情みたいな状態になったら、それはそれで微妙になるかも知れない(笑)
(06年3月28日)

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狼と香辛料2
著者:支倉凍砂
賢狼ホロと共に旅を続けるロレンス。銀貨騒動で儲けた胡椒を武具に交換したロレンスは、教会都市リュビンハイゲンへと向かう。だが、そこで待っていたのは…。ロレンスの命を賭した行商が開始される。
前巻もそうだけど、やっぱり読んでいて感じるのはライトノベルとしては異色の作品だなぁ…というところだろうか。一応、ホロがその本当の(?)姿を示す、という部分に関しては派手なファンタジーという感じなのだが、全体を通せば、ロレンス、ホロと商人や何やらの交渉であり、また、そんなにぶっ飛んだファンタジー設定があるというわけではない(ホロの存在自体が…と言うツッコミ禁止)。そういう意味じゃ、地味とも言えるんだけど、逆にそれが良い味を出している、と感じる。
今回は、仕入れた武具が暴落し、危機に陥ったロレンスが起死回生の行商に出る、という話。そこに至る過程、それを進める過程もさることながら、しっかりとその後の一波瀾があるとか、しっかりと作っているところに好感が持てる。
で、ロレンスとホロのやりとりが何とも…(笑) 相変わらず、ホロに言いように言いくるめられながらも、たまに反撃するロレンス。そのロレンスの反撃に対するホロの反応。前回よりも確実に、互いのことを信頼しているんだけど、やっぱり初々しさがあって読んでいて微笑ましい。この辺りもこの作品の魅力だよなぁ…。
1巻も楽しませてもらったんだけど、2作目も期待通りに面白かった。
(06年6月25日)

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狼と香辛料3
著者:支倉凍砂
北へと向かうロレンスとホロ。ホロの故郷であるヨイツについての情報を仕入れる為、市と祭で賑わうクメルスンの町へと足を運ぶ。そこで二人は若き行商人・アマーティと出会う。祭を楽しむ為にも、雑事を済ませようと考えるロレンスは、ホロに一目惚れしたと思しきアマーティの「ホロに町を案内したい」の申し出を受け入れるのだが…。
このシリーズも3巻目。今度は、こういう方向で来ましたか…。
今回は、様々な意味で、これまでの2巻とは違った方向といえると思う。これまでの2巻であった危機は、どちらかと言えば、ロレンス自身の危機。で、今回も当然のように危機は訪れるわけだけど、今回訪れるのは、ロレンス自身というよりは、ロレンスとホロの絆の危機とも言うべき物。序盤から、いきなり二人のやりとりが「良い感じ」になっているし、中盤に至ってはもう最高潮まで来ている。そして、後半、一気に叩き落される。冷静に見れば…というのは、確かにというのはあるんだけど、やはり後半のロレンスの焦燥感であるとかが伝わってくる。
と、同時に、今回はこれまでと違って、ロレンスが仕掛ける…というこれまでに無い展開にも新鮮味があった。この辺りも、先に書いたロレンスの想い、とかが先走った結果なのだろうけども。
そんなでさらに前進した二人(?)になるわけだけれども、今作を見る限り、ゴールとなる地点に着実に接近しているわけで、今後、シリーズそのものがどういう風になっていくのか? という部分も気になるところではある。
(06年10月19日)

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狼と香辛料4
著者:支倉凍砂
ヨイツの街に関する情報を求め、田舎の村・テレオへやってきたロレンスとホロ。だが、肝心の修道院の場所については明かに口を閉ざされてしまう。そして、村の不可思議な様子が目に映る…。
うーん…4巻目にして、初めて…と言って良いくらいに、これまでとは違ったパターンを出してきたな、というのが最初の感想。前巻のところで、金銭的にも余裕のある状態で始まった…ということもあるんだろうが、ロレンス自身の責任でピンチに陥るのではなく、あくまでも外部の存在として巻き込まれる形。それだけに、ロレンスとホロの掛け合いのようなところが非常に多くて、それがまず楽しかった。
と、同時に、これまで一応は出ていたものの、あまり触れられていなかった、世界観、特にこの世界の宗教観というのものが綺麗に描かれていた話とでも言うか。唯一神を奉じる教会と、土着の神々を奉じる地元の人々の間の温度差。そして、その勢力争い…なんていうものが垣間見られて、世界観その物が奥深くなったように感じる。
着実に着実に旅は終わりへと向かっているわけなんだけど、そうだからこそ、ロレンスとホロが今後、どういう選択をしていくのか…というのが気になってくる。
(07年2月14日)

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狼と香辛料5
著者:支倉凍砂

伝承を求め、レノスの街を訪れたロレンスとホロ。のんびりとしたいホロを他所に、一人、好奇心に突き動かされるロレンスは、同じ宿に泊まる女証人・エーブから、ある商談を持ちかけられる…。
もうね…正直、ロレンスとホロのやりとりだけで「ご馳走様」状態ですわ(笑) いや、もうなんか、この二人のやりとりを見ているだけでこっちとしては終始ニヤニヤという感じで、それだけで満足しちゃっている自分て何なんだ? っつー感じ。
というわけで、最初から、二人の完全に互いを知り尽くしたやりとりを楽しんでいたわけなんだけど、その辺りがちゃんと今回の話のメインとなっているあたりにやっぱりこの作品の良さ、上手さを感じる。完全に互いを知り尽くした二人。しかし、旅は終わりが近づきつつある。そして、現在が楽しいからこそ生じる問題…。商談とか、そういう部分、当然、あるんだけど、今回、それはメインになくて(でも、それが重要な役割を果たしている)、二人の関係を巡る物語としてしっかり仕上がっているのは良い。本当、派手さは無いのだけれども、面白いんだよな…これ…。と、同時に、ある意味じゃ、今回の話に、作品と読者の関係を重ね合わせてしまったのは、深読みしすぎかな?(苦笑)

しかし、この作品のアニメ化っていうのに、悪い予感ばかりが先立ってしまうのは、心配性すぎるのかな? 元々、それほど派手さがあるわけでなくて、心理描写とか、そういうので読ませる作品に加えて、オリジナルキャラクターを加える…とか言うと、どうもそれが先にたってしまう…。
良い意味で期待を裏切ってくれることを信じたいが…。
(07年8月18日)

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狼と香辛料6
著者:支倉凍砂

エーブを追うことを決めたロレンスとホロ。時間短縮のため、川を下る商船に同乗することに。その途中、関所で苦境となっている少年・コルを助けることとなり…。
なんていうか、これまでのシリーズの中では最も地味なエピソードかも知れない。最終的に訪れる変化は、これまででも最大限のものだし、また、今後に向けてもかなり重要な情報はちりばめられているのだけれども、話としての派手さみたいなものは皆無。でも、それでも全く不満がないのは不思議。
とにかく、読者の求めているものをしっかりと受け取っているよな…というのが何よりも。もう、ロレンスとホロのやりとりが、これまでで一番濃密で、それを見ているだけでお腹一杯、てな感じですな。
成り行き上、弟子ということになった少年・コルとのやりとり。ホロとのちょっとした喧嘩と、その裏にある両者の間にあるものと、それでも…という二人の思い。本当、そういう心情の部分がじっくりと描かれていて、今回はずっとニヤニヤ…以外に出てこないんだもん、これ。やっぱり、この距離感が物凄く心地良いんだよな…この作品は。
最初にも書いたけど、今回のエピソードで最終的に訪れた変化というのは、これまでで最大級。この変化が、二人の関係にどう関わっていくのか…に注目かな。

しかし、やっぱり1月からのアニメは不安だ…このシリーズ、好きなだけに…。
(07年12月19日)

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